米国で約40年前に始まった、処方の最適化を目指す「アカデミック・ディテーリング(Academic Detailing:AD)」が日本でも広がりつつある。どのような効果が期待できるのか。日本アカデミック・ディテーリング研究会代表理事の小茂田昌代氏に聞いた。
訓練を受けた臨床薬剤師が、コマーシャルベースではない、基礎薬学と臨床のエビデンスを基に、医薬品の公正中立な適正使用情報を提供するアプローチです。アカデミック・ディテーラーの使命は、処方の個別最適化です。医師が有効性・安全性・費用対効果を考慮した最適な処方が行えるように支援する活動として、1981年に米国で始まりました。
米国では、ハーバード大学の研究チームが、オピオイド鎮痛薬のプロポキシフェン、抗菌薬のセファレキシン、鎮痙薬のパパベリンの過剰処方を減らすために、ADの有用性を検証する比較試験を実施しました。この比較試験では、これらの薬を処方している435人の医師を無作為に介入群2群、対照群の3つの群に分けています。介入群はアカデミック・ディテーラーが6カ月間に2回訪問し、エビデンスに基づいた薬の情報をまとめた資材を使った処方支援をするAD群、同じ資材を4カ月間に6回郵送する群に分けられました。
その結果、AD群では、情報提供がなかった対照群より標的薬の処方が14%減少し、大幅なコスト減につながりました。資材郵送群は対照群と有意な差が出ず、face to faceでのADが重要であることも明らかになっています。この結果は、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』で1983年に報告され、ADが世界へ広がるきっかけになりました。
また、豪州では、1991年に南オーストラリア州アデレードで政府の資金によるADプログラムが開始されました。このADプログラムでは、アデレードの開業医と専門医210人を対象に、6〜9カ月に1回アカデミック・ディテーラーが訪問してNSAIDs処方の最適化を目指しました。その結果、NSAIDsの副作用による消化管出血での入院が5年間で70%も減少するという劇的な成果が報告されています。