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鼻・副鼻腔悪性腫瘍[私の治療]

No.5172 (2023年06月10日発行) P.50

本間明宏 (北海道大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室教授)

登録日: 2023-06-07

最終更新日: 2023-06-06

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  • 鼻腔あるいは副鼻腔には,皮膚,粘膜上皮,腺組織,血管,神経,軟骨,骨,軟部組織,血液リンパ系細胞,歯原性組織などが含まれており,これらを母地とする悪性腫瘍が発生する。扁平上皮癌が約70%を占めるが,そのほか様々なタイプの悪性腫瘍が発生する。

    ▶ 診断のポイント

    腫瘍が上顎洞内に限局している初期では自覚症状がないことが多く,副鼻腔炎と同様の症状(鼻閉,鼻漏)を呈することが多い。しかし,副鼻腔炎,花粉症などのアレルギー性鼻炎は両側性のことが多く,片側だけに症状がある場合や,鼻出血,血性鼻漏を繰り返す場合には悪性腫瘍を鑑別することが必要である。顔面,口蓋,上歯肉の腫脹,眼症状(流涙,眼球突出,眼球偏位,複視など)といった症状は,鼻・副鼻腔の腫瘍性疾患の可能性を考え,精査を行う。

    診断は生検によって確定するが,副鼻腔に発生する悪性腫瘍は,扁平上皮癌以外にも悪性リンパ腫,悪性黒色腫,嗅神経芽細胞腫,悪性ではないが内反性乳頭腫など多彩で,病理診断に苦慮する場合もある。そのため,CT,MRIなどの画像診断を行い,腫瘍から確実に十分な量の組織を採取することが重要で,全身麻酔下での生検が必要となる場合もある。

    画像診断は,CT,MRIが基本である。CTは骨破壊の有無の診断に優れ,MRIは軟部組織の陰影を診断するのに優れる。単純CTのみでは軟部組織の陰影の評価はほとんどできないが,造影剤を用いると血流が豊富な組織が濃く(白く)描出され,画像のコントラストが明瞭になり,より詳細な観察が可能となる。

    ▶ 私の治療方針・処方の組み立て方

    手術が治療の基本となるが,大きく切除すると顔面の形態に変化をきたすこと,脳・眼などの重要臓器が近接しており,十分な切除マージンを設けられないことから,放射線治療,動注化学療法などの化学療法なども組み合わせた集学的治療が行われることが多い。いずれの治療も,腫瘍の進行度,施設の治療経験,患者の希望などを考慮して決められる。

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