【座談会の模様(動画)は当社サイトの「Web医事新報チャンネル」でご覧頂けます。】
【桑島】今回のテーマは「学術講演会におけるスライド事前検閲を巡って」です。いったい事前チェックについて何が問題で,どのような方向で解決できるのかについて話し合いたいと思います。田邉先生,後藤先生には医師の立場から,石田先生からは製薬協の立場からお話し頂きます。
まず田邉先生,事前チェックの何が問題なのかをお話し下さい。
【田邉】私自身が専門医師として,企業主催・共催の講演会に参加して感じているところをお話しさせて頂きます。
まず事前チェックは,“ディオバン事件”をきっかけに,講演会を真っ当なものにしようというところから始まったものと理解しています。ただ,医師側も企業側も「決して良いものとは思わないが,ルールだから仕方がない」と思っているようです。
現状でまず指摘したいのは,日本で適応が取れている範囲のプレゼンテーションでないとだめだということでチェックされる点です。しかし,適応の範囲内ということになると,日本ではデバイスラグあるいは薬物ラグにより,海外よりも認可が遅れているという現状があって,聴講者が知りたい最新の情報が組み込まれなくなっています。
私は,既に国際学会で発表され,論文化されたものであれば,日本で適応外であっても,講演の内容に組み込んでよいのではないかと思っています。
【田邉】もう1つは,誇大広告や競合他社のバッシングになるような内容は避けるべきということで,事前チェックが入るようです。
ただ,その場合,主催者企業に有利なような手直しがされているのではないかと疑念を持つこともあります。そうすると本末転倒です。たとえば,よく薬品名を一般名で記載してくださいという指導があるのですが,ある講演会では主催者企業の製品は商品名のまま,他社の製品は一般名にされるというような経験がありました。また,自社の製品に有利な表現は残しつつ,他社の製品では省くようスライドを手直しされたということを,友人から聞いたことがあります。そうだとすると,公平という意味合いから外れているのではと感じています。
実際のところ,医師側も企業側も規制のルールや背景の詳細を知らない方も少なくないように思います。ルールを策定した理由や過程などを,双方広く周知する必要があるのではないでしょうか。