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喪失・悲嘆・死別のケア[私の治療]

No.5176 (2023年07月08日発行) P.42

杉本由佳 (すぎもと在宅医療クリニック院長)

登録日: 2023-07-11

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  • 在宅医療の現場では,患者・家族と深い関係性を築きやすい。そのため,在宅療養中から家族のケアを十分行うことで,達成感や多くの思い出をつくることができる。それが死別後の悲嘆を軽減し,複雑性悲嘆の予防となる。

    ▶在宅医療における家族ケアの要点

    ①家族は患者と同様に様々な苦悩を持つ。家族はケアチームの一員であると同時に,ケアを受ける対象である。

    ②十分な症状マネジメントが行われ,患者が穏やかに過ごせることが,家族のケアに非常に重要である。

    ③家族の持つ苦悩と多様なニーズに対応するため,多職種による包括的評価とニーズに沿った対応が必要である。

    ④臨終期・臨死期および死別における医療者の関わりやケアは,悲嘆のケア(グリーフケア)の一環として重要である。

    ⑤在宅医療を提供しているときから,死別後のグリーフケアを含めた連続したケアを行っていくことが大切である。

    ▶在宅での看取り

    看取った後,「悲しいけれど,やり切ったすがすがしい気持ち」と言えるのが,理想的な在宅での死別である。

    在宅での看取りは,愛する人,大切な人を家族が看病し,そして「死にゆく過程」を肌で感じることができる。いずれ自分に訪れる死の姿をみて,感謝,思いやり,孝行などの感情を胸にとどめ,子や孫,若い世代に「死」というものを伝えていくことが重要である。

    患者が亡くなった後に後悔しないためには,特別なことだけではなく,家族とともに過ごすありふれた日常(笑ったり,泣いたり,怒ったり)を幸せと感じながら過ごせることが重要である。そのためにも十分な症状マネジメント,特に苦痛の緩和は非常に重要である。

    終末期は病状が刻々と変化していくため,「今やりたい」を先延ばしせず,その瞬間を大切に過ごすよう助言し,多職種で見守り,援助していく。

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