在宅療養患者の持つ慢性呼吸器疾患には様々なものが挙げられる。気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患(COPD)は代表的な疾患である。そのほかにも間質性肺炎,非結核性抗酸菌症,気管支拡張症(中葉舌区症候群を含む),陳旧性肺結核,肺高血圧症などの非がん疾患や,肺癌,転移性肺腫瘍,悪性中皮腫,がん性胸膜炎等の悪性疾患など,多くの疾患がある。病態の違いから,疾患への治療・対応も大きく異なるが,本稿では慢性呼吸器疾患のケアに共通して考えられることを挙げる。
肺疾患を持つ患者は,肺音にラ音など雑音を聴取することが多いが,日々の診察では聴取する範囲や大きさに変化がないかに注意する。呼吸回数は病態悪化時に重要な指標となるため,平常の回数を知っておくことで状態の変化に早く気づくことができる。肋間陥没など努力性呼吸の有無にも注意する。体重減少・低栄養状態は状態悪化の指標であり,COPDでは予後因子のひとつである1)ことから体重の定期的な測定も重要である。手指変形,上肢の麻痺があれば,吸入薬の使用を自身で行うことが困難な場合があり,確認が必要である。
息切れ,呼吸苦などの自覚症状と廃用から日常生活動作(ADL)の制限が生じる。経過中の変化に注意する。
呼吸苦や外出の制限,不安から抑うつ,不眠がみられることがある。症状を自身で軽減しようと,睡眠薬,アルコールの摂取量が増加することもある。また,認知機能の低下により薬剤管理や,特に吸入薬の使用が困難になることがある。
呼吸苦,ADL低下から様々な場面での援助・介助が必要となる。介護者である同居家族も高齢である場合が多く,体力や認知機能面において,身体介護や服薬管理と介助が可能かどうかの評価が必要である。
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