株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

即日結果報告が可能なリアルタイム診療システムで早期診断・治療に取り組む[クリニックアップグレード計画 〈システム編〉(43)]

No.5177 (2023年07月15日発行) P.6

登録日: 2023-07-14

最終更新日: 2023-07-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

かかりつけ医機能報告制度の創設により、地域のクリニックは多様な患者ニーズに対応した総合的な医療を提供する機能が求められている。連載第43回は、院内をオールIT化しリアルタイム診療システムを活用することで、予約なしの患者に対しても健康診断や人間ドック、脳ドックなどの検査結果を約1時間で報告できる体制を構築。1日平均約200人の外来患者に対応しながら、早期診断・治療に取り組む有床診療所の事例を紹介する。

栃木県宇都宮市の冨塚メディカルクリニックは、JR宇都宮駅から約10kmという郊外に位置する有床診だ。院長の冨塚浩さんは、自治医大を卒業後、地域医療に従事。さらに大学院に進学し博士号を取得、総合内科専門医や血液専門医などの資格も取得した上で、2004年、病院と遜色ない最先端医療の提供をコンセプトに掲げてクリニックを開業した。

同院の特徴は、冨塚さんが勤務医時代に経験した院内IT化のノウハウを生かし、開業時から電子カルテを中心とした院内ネットワークを構築、院内業務のほぼすべてをIT化することで効率的な“リアルタイム診療”を実践している点にある。MRIや全自動生化学測定システムなどの高度検査機器を揃え、予約なしでも約1時間で検査の結果報告を受けることができる独自の迅速検査システムは、患者満足度が高いという。

「勤務医時代に複数の病院で院内システムのIT化を担当した経験があり、私が目指す高度医療を提供するには開業時から院内をオールIT化する必要があると考えていました。当院では常時、医師3人、外来スタッフ20人、検査スタッフは10人以上おり、ノートパソコンを含めたPC40台、モバイルを含めると60台の端末を活用して、連携しています。当院の動線と運用に合わせてカスタマイズしたシステムを構築したことで、検査項目が多岐にわたる人間ドックでも約1時間の在院で結果を聞くことができます。病院で数カ月かかる検査結果が当日聞けるという口コミが広がり、遠方からも多くの患者さんが来院されています。診察を開始する8時半には混雑する待合室も、昼の12時半にはほぼすべての診察が終わるので患者さんが残っていることはありません」(冨塚さん)

院内システムがシームレスに連携

同院が導入した院内システムは、医療機関向けシステムインテグレーターのスマートMI株式会社が開発した「MI電子カルテシステム」(https://smart-mi.net)。電子カルテを中心に検査システムや医事会計システム、病棟支援、PACS、検査機器などがシームレスに連携することで、院内情報をリアルタイムで共有できる。

MI電子カルテシステムの特徴は、導入施設の運用に応じたカスタマイズが可能な点。同院のケースでは、外来や病棟、手術室、救急室でフィルムや報告書が必要なく、カルテに入力されたオーダーがそのまま検査室や処置室などに素早く伝えられるシステムを構築した。透析センターでは、監視システムと電子カルテシステムが連携し、治療中にオンラインで患者データを管理、スタッフは患者のケアに集中できる体制をとっている。院内システムにより全部門、全職種間の情報共有が可能になり、患者の待ち時間削減やスタッフの生産性向上につながっている。

MI電子カルテシステムを導入する決め手となった理由について冨塚さんはこう語る。

「最初、勤務先で利用していた大手電子カルテメーカーに相談したのですが、非常に高価かつカスタマイズが難しいことが分かり導入を断念しました。知り合いだったスマートMI代表の中木英勝さんに話をしたところ、私の目指す『高度医療を提供し、早期診断・治療を実践する』というコンセプトに適した提案があり、2004年当時、クリニックで即日結果が出る検査システムは画期的でしたのですぐに導入を決めました。また医療機器とシステムを一括導入することで、大幅なコスト削減ができる独自プランの提案をいただいたことも理由の1つとなりました」

リアルタイムで院内情報の共有が可能

同院のリアルタイム診療を可能にしているのが、電子カルテのメッセージ機能。受付の混雑状況や検査部門のデータ、病棟のバイタルデータやオーダーなどの情報が随時共有される。院内は無線LAN環境が整備され、すべての職種がシステムを活用し院内コミュニケーションを図りながら医療を提供している。

「私は通常、3つの診察室を行き来しながら外来診療を行っています。例えば診察室1で私が診察、診察室2と診察室3で看護師が予診、診察が終わると予診が終わった2と3に移り診察、1には新しい患者さんが案内され予診を開始するという流れです。それぞれの診察室の情報はシステムに表示されているので、すぐに診察が可能です。無駄をなくすことで結果的に一人ひとりの患者さんに向き合う時間が確保できる点も大きなメリットです」(冨塚さん)

週に数件の早期がんを検査当日に発見

もう1つ、MI電子カルテシステムの機能で富塚さんが高く評価するのが、検査画像システムだ。

「MRIやCTなどの画像で細かい患部のサイズを正確に計測できる機能が優れています。例えば頭部MRIなどでは血管の太さが重要になります。数値が表示されるので患者さんに画面を見せながら説明すると、症状への理解度が高まり、スマホで写真を撮る方もいます。過去の画像との比較も可能なので、変化を丁寧に見ることで精度の高い診察が可能になります。来年2月にはシステムのバージョンアップを予定しています。リアルタイム診療の効果もあり、週に数人の早期がんを発見し、がんセンターなどに紹介しています。今後も地域住民の皆さんが気軽に受診できるクリニックとして機能を充実させ、早期診断・治療につなげていきたいと思います」

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top