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医療法人社団ケーイー ふるたクリニック 神奈川県川崎市麻生区百合丘1-19-2 司生堂ビル1F |
私は元々肝臓、胆嚢、膵臓の外科医として大学病院で長く手術をしており、移植も手掛けていました。大学病院は一般に専門性の高い医療を提供できる素晴らしい環境なのですが、標準治療以外の治療を行いにくいという一面もあります。当時私は准教授の地位にあり、後進の医師を指導する立場にありました。患者さんの病状によっては、標準治療とやや異なる治療を行いたい場面があります。一番典型的なのは、標準治療で決まっている薬の投与量だと多すぎて副作用が強く出てしまうが、もっと少量なら副作用を抑えて治療効果を出せる、というケースです。しかし組織の一員として、標準治療を守る責任があるため、この治療は大学病院では行えません。そんなジレンマの中、保険外も含めてもっと患者さんのためになる治療ができないかと思い、意を決して2010年にクリニックを開業しました。
開業してからも、一部の抗がん剤は入院設備のないクリニックには卸してもらえないため、薬の入手にも困難がありました。そんな中、海外医薬品の個人輸入代行サービスについて知り、無事に薬を入手し患者さんに治療を行うことができました。また患者さんご自身やご家族も、よくインターネットで調べて治療を受ける時代なので、未承認治療薬/海外医薬品に対する患者さんからのニーズは高まっています。上述のように、薬によっては、患者さんがクリニックで治療を受けたい場合、個人輸入せざるを得ません。例えば副作用の小さい、標準治療よりも少量の抗がん剤治療を求めて、最初からクリニックで治療を相談する方も増えているのです。
はい。海外からの医薬品の輸入は納期が2~4週間かかるので、患者さんと相談して薬の利用が決まった後に、できるだけ早く手配するため、代金をクリニックで立て替えるケースがあります。その後患者さんが急変して亡くなってしまった場合に、薬の輸入自体が宙に浮いてしまうということがありました。やむを得ない事態ではありますが、輸入の性質上、他の患者さんには使えないので、この代金はクリニックの持ち出しになります。この件も含め、保険外診療はクリニックにとって経済的な利益が小さいのですが、患者さんにより良い医療を提供するためと思って続けています。
そもそものネックはこれが自費(保険外)診療ということで、経済的に選べる患者さんが限られてしまうという事実はどうしてもあります。
まず患者さんの治療の成果が良かったことです。大きな病院ではその薬の適用外になっているけれど、患者さんが海外の症例や文献を調べると、使われていることが分かる。そういう場合に当院で治療を受けて、がんが縮小したとか、予後が良い、余命3か月・半年と言われた患者さんが、3年も5年も生きられた、という方は結構います。
また規定の処方量が多すぎて副作用も大きくなりがちなお薬で、5分の1や10分の1の量を使って効果があり、副作用も少なかった方もいます。
免疫チェックポイント阻害剤についての書籍を出している他クリニックの医師もいて、このやり方は患者さんにとっての選択肢、医療の幅としても広がっていくのではないかと感じています。