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ある医学部予備校の塾長ブログ(村田洋一 大学進学教育GHS 塾長)[日本医事新報特別企画 医学部進学ガイド「医学部への道2026」]

No.5259 (2025年02月08日発行)

登録日: 2025-02-19

最終更新日: 2025-02-18

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医学部人気の高まりを受け、医学部受験はここ15年で劇的に難化しました。
限られた時間で難関を突破するには、日々の勉強をいかに効率的に行い、実力を身に付けるかがカギになります。そのためには、豊富な情報と合格に導く確かなノウハウを持つ医学部に特化した塾や予備校に通うことが近道と言えます。
そこで!Web医事新報では医学部を目指す受験生や受験生をお子さんに持つ保護者の方に向け、指導力に定評のある医学部予備校をご紹介します。
(日本医事新報特別付録・医学部進学ガイド「医学部への道2026」の全文はこちらから無料でダウンロードできます)

今時代が着実に変化しているのを誰もが感じています。インターネットの世界が始まったと思う間もなく、AIがもう一段世界を変えようとしています。国際情勢も不安定な方向へ向かう兆しがあり、各国の政治情勢もこれまでの当たり前が崩れつつあるようです。時代は変化というよりも混迷してきていると言う方が正しいのかもしれません。

そうした混迷に乗じるかのように、特殊詐欺が横行し、闇バイトが世相を暗くしています。それだけいっそう国民一人一人が正しい判断力を持つ必要が高まっています。特にこれから日本の未来を背負っていく若者たちが“正しい成長”をしていかなければならないとあらためて感じています。

そうした問題意識を背景にしているだけに、このコーナーでは毎年同じことを述べさせていただいています。簡単には、「確かに予備校の役割は受験生を大学に合格させることであるが、あまりに近視眼的に、合格しさえすればどんな学習方法でもよいとなれば、むしろ若いアタマをスポイルしかねない。典型が解法マニュアル暗記・パターン認識の過度な詰込みである。逆に中身を本当に理解し、内容を整然と系統立てて物事を判断できる知的能力をつくる受験勉強こそが、大学入試においてもまた進学後の医学の勉学にも大いに力を発揮するのである」という内容です。

昨年英語の授業をやっていてあることに気づき驚かされました。都内のある難関私大医学部の入試問題を研究していた時に、出版物やネットで公開されている多くの英語指導者の解答が一つを除いてすべて誤っているのです。難問というわけではなく、医学部受験生でなくとも、一般的な常識から考えてもすんなり正解を出せる問題であるにもかかわらず、なのです。

なぜこんなおかしなことが起こるのだろうとその解説を読んでみると、選択肢の選び方について「これは本文に書いてないからダメ」「これは該当文のすぐ後ろに書かれているから正解」という説明をしているのです。あまりにも表面的でお粗末な“解法マニュアル” にしたがった解説に唖然としました。そこには、本文全体の文脈という発想は全くなく、論理的に筋を通して考える力を養うという一番肝心な受験勉強の眼目が忘れ去られているのです。

あらためて大学入試に必要な学力とはどのようものか、予備校は何を教える場なのかを考えてみる必要があります。確かに予備校は受験生を大学に合格させることを目的にしていますが、あくまで“学力を付けて”合格させるということから目を離してはならないはずです。

表面的な現象で判断するのではなく、その奥に潜む論理やストーリーを見抜く力こそが受験で養うべき学力なのです。受験生がやがて携わる医療の世界は、まさしく現象に惑わされることなく、その奥にある本質を見抜く力が求められる世界です。大学もそういう学力を持った人材を求めています。

国立大学の入試問題は昔からそうでしたが、近年は私大医学部の入試もこのような本当の思考力を持っているかどうかを計る問題へと変わってきています。それは社会全体の要請でもあり、日本の若者を正しい方向に導くという点で歓迎すべきだと私は考えています。

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