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けいれん[私の治療]

No.5178 (2023年07月22日発行) P.48

髙橋牧郎 (医学研究所北野病院脳神経内科主任部長)

登録日: 2023-07-22

最終更新日: 2023-07-18

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  • けいれん(convulsion)とは,筋肉が不随意に激しく収縮する発作症候全般を指す。てんかん発作(seizure)は,大脳の神経細胞の電気的異常興奮により生じる短時間の神経学的異常症候を指し,意識障害に全身性強直間代性の骨格筋のけいれんを伴う全般発作と,部分的な神経学的異常にとどまる部分発作がある。てんかん(epilepsy)は脳波の異常を伴う疾患病名であり,少なくとも2回以上発作の既往があるものをいう。けいれんを伴わない非けいれん性てんかんもあることから,てんかんとけいれんとは同義でない1)
    けいれんのパターンは多種多様であるが,てんかん性と非てんかん性がある(「てんかん」の稿参照)。
    小児では熱性けいれんが最多であり,特に乳幼児では発熱に引き続いて筋肉のけいれんがしばしばみられる。熱性けいれんの好発年齢は生後6カ月~5歳程度であり,短時間の発作がほとんどである。分娩時外傷,先天性異常,遺伝性代謝異常症などの既往がみられることもある2)。成人では症候性てんかんに伴うけいれんが最も多く,脳卒中後のけいれんや頭部外傷,脳炎,髄膜炎,脳腫瘍,認知症などが原因となる。失神,心疾患や低酸素など,一過性の脳虚血,低酸素脳症後にもけいれんがみられることがある。また,特殊なけいれんとして,片側顔面けいれん(hemifacial spasm),眼瞼けいれん(brepharospasm)などがある。

    ▶診断のポイント

    初発の全身けいれんを診たら,てんかん以外の緊急の病態,すなわち薬物中毒,低血糖や電解質の異常,心疾患,脳卒中・脳炎などの可能性の判断を優先すべきである。体の一部分が一瞬びくっとする,眼瞼や手足など,一部の筋肉がけいれんする場合もあり,これらの症状は,脳,脊髄,末梢神経,筋肉のあらゆる部分の異常で生じうる。脳の器質的疾患が除外されれば,ヒステリー発作など精神疾患に伴うけいれんのこともある。反復音,点滅する光,コンピュータゲーム,体の特定部分に触れることだけで,けいれん発作が誘発される場合は反射性てんかんと呼ばれる。

    【けいれんを起こす主な原因】

    ①高熱:熱中症,全身感染症

    ②脳炎,髄膜炎,脳膿瘍,狂犬病,神経梅毒,破傷風,トキソプラズマ症

    ③代謝性疾患:高血糖,低血糖,高ナトリウム血症,低ナトリウム血症,低カルシウム血症,低マグネシウム血症,腎不全,肝不全,高アンモニア血症,ビタミンB6欠乏症(新生児)

    ④一過性低酸素脳症:心停止,失神,CO中毒,窒息

    ⑤器質的脳疾患:脳卒中,水頭症,血管炎,頭部外傷

    ⑥脳浮腫に伴うもの:子癇,高血圧性脳症,後部可逆性脳症症候群(PRES),可逆性脳血管攣縮症候群(RPLS)

    ⑦薬物中毒:アンフェタミンおよびその誘導体,カフェイン,フェンシクリジン(PCP),フェニルプロパノールアミン,テオフィリン,コカイン,抗うつ薬(アモキサピンなどの三環系抗うつ薬,ベンラファキシンなどSSRIの一部),抗精神病薬(ハロペリドールなどのブチロフェノン系薬剤,クロザピン,オランザピン,フェノチアジン系薬剤),アスピリン,抗不整脈薬(β遮断薬:プロプラノロール),抗菌薬〔β-ラクタム系,ぺニシリン,ニューキノロン系(ノルフロキサシン,オフロキサシン)〕,イソニアジド(INH),リチウム,シクロスポリン,農薬(有機リン系殺虫剤,カーバメート系殺虫剤,ピレスロイド系殺虫剤,グルホシネート,メタアルデヒド),その他(樟脳,銀杏,一酸化炭素,シアン化合物,硫化水素,ストリキニーネ)

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