「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに2025年に開催される大阪・関西万博。パビリオン建設の遅れが顕在化し、予定通りの開催を危ぶむ声がある一方で、「いのち」をテーマに掲げる万博を日本の質の高い医療技術・サービスを世界に発信する場にしようとする動きも活発化している。澤芳樹阪大大学院医学系研究科特任教授(大阪警察病院院長)らは7月25日、都内で記者会見を開き、万博と連動して医療機器・ヘルスケアの国際展示会「Japan Health」を開催すると発表。「大きなビジネスが起こる場にしたい」と強い意気込みを示した。
大阪・関西万博は、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で2025年4月13日~10月13日に開催される。国際展示会Japan Healthは万博の関連イベントとして同年6月25日~27日に大阪市内のインテックス大阪で開催される予定。発起人の澤氏は記者会見の中でJapan Health開催決定までの経緯を説明した。
心臓外科医として多くの医療機器・医療デバイスを使用し、またiPS細胞由来心筋細胞シートなどの開発に関わってきた澤氏は、ドバイで開催されている国際展示会「Arab Health」を2012年に視察。数千社規模の企業が出展し、大きなビジネスが起きている現場を目の当たりにし、強い衝撃を受けた。
澤氏は大阪人の1人として「いのち」をテーマとする万博を成功させたいと願う中で「Arab Healthのようなイベントができないか」と大阪観光局に相談。Arab Healthをはじめ多くの国際展示会を手掛けるイベント主催企業インフォーママーケッツに協力を求めたところ、話に乗ってくれたという。
澤氏は「日本では大きな学会に併設される展示会はあるが、会場に来た医師が見るだけで大きなビジネスは起こらない。日本には医療機器などを開発している立派な会社がたくさんあり、テクノロジーも非常に高いのに、ビジネス的にはちょっと残念なことになっている」と医療機器の国際競争の中で日本が後れを取っている現状に強い問題意識を示した。
万博と連動して開催することの意義については「世界中から人が集まり、万博に行く人がJapan Healthに流れ、Japan Healthに来た人も万博に行くという相乗効果が大きい。大きなビジネスが起こる場が万博で始まり、それがレガシーになることは日本の医療産業を大きく発展させることになる」と述べ、Japan Healthを万博のレガシーとして2026年以降も毎年開催する計画であることを明らかにした。
7月25日の記者会見には内閣官房、厚労省、経産省などの政府関係者も出席し、Japan Healthの成功に期待感を示した。内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長の井上学氏は、大阪・関西万博ではビジネス客も含め約2820万人の来場者を見込んでいるとし、万博会場の内外で「健康とウェルビーイング」などをテーマとしたビジネス交流を推進する考えを示した。
インフォーママーケッツのソレン・シンガーVice Presidentは、Japan Healthに合わせて万博会場内で専門家向けサミット「Future Health Summit Japan」も開催する予定と説明した。
インフォーママーケッツの発表資料によると、Japan Healthは「日本の医療技術の質の高さを世界へ発信し輸出を強化することにより、日本経済と世界中の医療機関・患者・社会に貢献すること」を目的とし、展示エリアでは「最先端の医療技術・サービスを一堂に集め、国内外から誘致するドクター、メーカー、ディーラー等に披露し、参加者間のビジネスを促進する」という。将来的に規模を毎年拡大させることで、日本が抱える医療機器の輸入超過の改善に貢献したいとしている。
最先端のヘルスケア技術・サービスの展示は万博会場内でも行われる予定だが、澤氏は「万博は展示、Japan Healthはビジネスの場」と両者の違いを強調した。Japan Health実行委員長を務めるインフォーママーケッツジャパンのクリストファー・イブ社長は、2025年のJapan Healthの目標として「出展社数1000社、3日間の来場者数5万人を目指す」と述べた。
大阪・関西万博が無事開催され、Japan Healthが大きな目標を達成できるか注目したい。