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CAVIを測定する血圧脈波検査は生活習慣病診療の質を高める有用な手段となる[クリニックアップグレード計画 〈医療機器編〉(32)]

No.5134 (2022年09月17日発行) P.6

登録日: 2022-09-16

最終更新日: 2022-09-16

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日本人の主な死因は、2021年の人口動態調査によると第1位が悪性新生物、第2位が心疾患で、老衰、脳血管疾患と続く。このうち心疾患と脳血管疾患の多くは動脈硬化が原因とされ、近年では高齢者のみならず若年者にも動脈硬化性疾患の発生が認められるようになっている。連載第32回では、血圧脈波検査を活用し、動脈硬化の進行度と狭窄の程度を測定、質の高い生活習慣病診療につなげているクリニックの事例を紹介する。


高齢者や生活習慣病患者への診療で、血圧脈波検査を積極的に実施しているのが、栃木県小山市にある永山医院の永山大二院長だ。同院は、2018年に3代目院長として永山さんが継承した内科・小児科のクリニック。永山さんは東邦大医学部を卒業後、同大医療センター佐倉病院の糖尿病・内分泌・代謝センターなどで臨床・基礎研究に従事。日本糖尿病学会の専門医・指導医資格を持ち、退職後も客員講師として臨床研究に携わっている。

クリニックでは、地域のかかりつけ医として生活習慣病の診療をメインに行う。同院は特段高度な医療機器を備えているわけではないが、CAVI(Cardio Ankle Vascular Index)などを指標として動脈硬化の進行度と狭窄の程度を測定する血圧脈波検査装置を継承時に導入した。その理由について永山さんはこう語る。

「CAVIは動脈の硬さを表す指標です。血管病変を火事に例えると、CAVIのメリットは燃え盛る火の勢いを簡便に把握できることです。生活習慣病治療では、ガイドラインにある血圧などの基準値をただクリアすればいいというものではなく、代謝異常症をはじめとする危険因子がどの程度血管にダメージを与えているかを最初に評価する必要があります。血管機能は適切な対処を行えば回復することが分かっています。CAVIの数値を踏まえて治療介入を行い、ひと段落したところで再びCAVIを測定することにより、治療効果の答え合わせができます。私にとって、治療戦略の判断材料となるCAVIに加え、心電図も簡便に計測できる血圧脈波検査装置は日常診療に欠かせないものです。継承するに当たり、導入しないという選択肢はありませんでした」

血管機能から心電図まで1台で検査

同院が導入しているのは、国内医療機器大手のフクダ電子が発売する血圧脈波検査装置「VaSera(バセラ)」。VaSeraシリーズは血管機能から心電図まで、心血管に関する一連の検査を1台で実施できる機能を持つ。現行モデルの「VS-2500」(https://bit.ly/vs-2500)の主な特徴は、①ACS診断補助機能等が付いた12誘導心電検査に加え、CAVI、ABI、TBI、負荷後ABI、分節脈波検査などの血圧脈波検査、②心電図検査と血圧脈波検査が一体となった総合レポート作成、③心臓と血管の経時的管理ができる「心血管時系列レポート」作成─などが可能なところにある。

①の血圧脈波検査は、リアルタイムでCAVIの波形の安定性が表示、波形のバラつきをチェックする機能もあり、精度の高いCAVI算出が可能になる。測定前に前回のドミナント波形と計測値を画面上で把握できる比較機能も搭載している。②の総合レポート機能は、CAVIの波形や計測値に加え、心音や心電図波形、血管年齢グラフなどを表示、各種データが把握しやすい工夫がなされている。③の心血管時系列レポートは、心電図と血圧を二次元プロットで同時に確認できる。X軸を最高血圧、Y軸を左室肥大(AUST)としたグラフで変化を視覚的に表示する。

高い操作性も魅力だ。ディスプレイの操作ボタンは大きく、押しやすい。ボタンをタッチするだけで検査の切り替えなどが可能なため、操作手順が少なく、誰でも簡便かつ迅速に検査ができる。

「動脈硬化度や血管年齢を、患者さん向けのレポートで分かりやすく示せる点もメリットです。患者さんの中には『血圧だけ下げてくれればいい』という方もいます。その場合でもVaSeraのレポートを提示して『血管がどれくらい柔らかくなっているか、正常に近づいているかを確認しないとせっかくの治療や食事制限が的外れになるかもしれませんよ』と伝えると、ほとんどの患者さんは納得してくれます。分かりやすく結果を伝え、患者さんやご家族に症状や治療への理解を促すことにつながる検査機器は、とても価値があると感じています」(永山さん)

かかりつけ医こそ血圧脈波検査の活用を

同院では、生活習慣病の初診患者にはまず血圧脈波検査を実施する。その後、コントロールが悪い場合は3カ月に一度、指導を兼ねて検査を行う。薬の追加に難色を示すケースや禁煙できない患者に、治療の必要性を説くための根拠として実施する場合もある。通常は半年か1年ごとに検査を行い、経過を観察する。

動脈硬化を巡っては、進行度が疾病予後・生命予後の独立した指標であるとの報告が増加。これまで動脈硬化指標のグローバルスタンダードとされてきた大動脈PWVは、計測部位が必ずしも統一されていないことや血圧依存性が高いことなどが指摘されている。

永山さんは血圧に左右されない動脈硬化指標としてのCAVIの有用性について、臨床を通じて実感したケースがあったという。糖尿病の治療で受診した患者のCAVIが、喫煙者なのに5.0台ととても低かったことに違和感を抱き、心音をチェック。1音と2音がまばらで収縮期雑音もあったため、大動脈弁狭窄症を疑い、患者は病院に入院した。気がつくのが遅ければ突然死の危険性もあった事例だ。

「狭窄があると血液がスムーズに流れていかないので、血流速度の低下が測定系に干渉し、見かけ上CAVIが下がってしまうようです。すぐにおかしいと感じ、CAVIの心電図の情報から正確な診断ができました。医師の基本は、丁寧な身体診察と検査を駆使して、個々の患者さんで異なる多様な病状を把握して、適切な治療をオーダーメイド的に提供することだと考えています。血管機能検査はほかにもありますが、簡便に検査ができ、動脈硬化の進行度だけでなく時に心臓の疾患も感知する血圧脈波検査を、当院のような地域のクリニックこそ活用してほしいと思います」(永山さん)

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