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特集:心原性失神の診断 up to date─植込み型ループ式心電計を中心に

No.5142 (2022年11月12日発行) P.18

佐藤宏行 (東北大学病院循環器内科)

登録日: 2022-11-11

最終更新日: 2022-11-09

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2011年東北大学卒。14~21年札幌・手稲渓仁会病院にて循環器内科研修後,勤務。22年より現職。専門・関心領域は不整脈(カテーテルアブレーション,デバイス,遠隔モニタリング),心不全(薬物,非薬物治療)。U-40心不全ネットワーク22-23年代表幹事。

1 失神とは何か?
・病態生理として「一過性の脳の低灌流」によって生じる。
・「一過性意識消失(TLOC)をきたし体位の維持ができなくなるが,後に自然に完全回復するもの」と定義される。
・意識障害や他のTLOC(特に,てんかんによる痙攣発作)と区別する。
・“一生で7人に1人が一度は経験する”commonな主訴・症候である。
・心原性失神は予後不良であり,見逃さない!

2 失神の鑑別診断
・病態生理による3つの分類をもとに,鑑別診断を挙げる。

3 失神に対するリスク層別化
・鑑別診断をもとに,病歴聴取・身体診察・検査を進める。
・「失神患者を帰してもよい? 入院?」
 →予後予測スコア(clinical prediction rule)を活用する

4 心原性失神の原因検索
・非不整脈性失神(killer chest pain,構造的心疾患)を除外する。
・心機能低下〔左室駆出率(LVEF)≦35%〕と冠動脈疾患を除外する。
・不整脈性失神を示唆する心電図所見を見逃さない。
・不整脈発作に対する長時間心電図記録を適切に選択し,検査する。

5 植込み型ループ式心電計(ILR)
・植込み型ループ式心電計(ILR)の適応:原因不明,再発性
・ILR植込み手技と,遠隔モニタリングによるフォローアップを行う。

6 症例提示
・Case 1:80歳代男性(洞停止→ペースメーカ植込み)
・Case 2:70歳代男性〔非持続性心室頻拍→心臓電気生理学的検査(EPS)→カテーテルアブレーション〕

伝えたいこと…
失神は生涯で7人に1人が経験するcommonな症候です。患者さんは「脳神経の病気? 頭部CT・MRIを撮って欲しい」と希望して受診されることも多いかもしれませんが,実際にそれは間違いです。一方,心原性失神と確定できるケースや,循環器内科医までたどり着くことが多いわけではありません。失神の初診外来の受診先はプライマリケア医・実地医家であることが多いと思います。専門分野を問わず,適切なリスク層別化の評価や失神の鑑別診断を進めましょう。そして,原因不明の失神患者に非常に有用な植込み型ループ式心電計(ILR)の存在をぜひ知って頂き,診断に困る場合は気軽に対応可能な専門施設へご相談ください。

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