【概要】財政審が5月30日、都道府県ごとに医療費の「支出目標」を定めることや、薬価調査・薬価改定の毎年実施などを求める報告書を取りまとめた。
財政制度等審議会(会長=吉川洋東大院経済学研究科教授)は5月30日、「財政健全化に向けた基本的考え方」を報告書にまとめ、麻生太郎財務相に提出した。その中では「フリーアクセスや自由開業医制を無制限に認めるのではなく、改革の手を供給面にまで広げ」なければいけないと指摘。医療・介護分野で特に重要な施策に(1)医療費の「支出目標」設定、(2)薬価調査・薬価改定の毎年実施、(3)介護報酬の適正化―の3点を挙げ、「避けて通ることは許されない改革の道」として実現を求めている。
●医療費少ない県を「標準集団」
このうち(1)の「支出目標」については、報告書の資料の中で後期高齢者の1人当たり医療費(2011年度)が最も高い福岡県と最も安い岩手県で約1.6倍の開きがあることを問題視。フランスの医療支出目標制度(ONDAM)を参考に、都道府県別に医療費の支出目標を設定し、医療費の抑制を目指すとしている。具体的には、医療費が少ない都道府県を標準集団とし、年齢・人口構成を補正した上で医療需要を算定し、支出目標を設定。保険者ごとの目標や国全体の目標も定める。併せて、レセプトデータを基に「(目標値と)実際の医療費との乖離の原因」を可視化するとしており、「原因」の例としてジェネリック医薬品の使用率を挙げている。さらに、「年内には制度改正の方向性と作業工程を固めるべき」と記載し、早期の実現を要請している。
●毎年の薬価調査・薬価改定も提案
診療報酬について提言しているのが(2)の薬価調査・薬価改定の毎年実施。「2年に1度という頻度が慣例化されている現状は理解に苦しむ」として、診療報酬改定の年度か否かにかかわらず薬価調査と薬価改定を行い、薬価の市場実勢価格の下落を毎年反映するよう求めている。
(3)の介護報酬の適正化では、給付費の「自然増」を検証し、事業者の収支状況や内部留保を踏まえ、来年度介護報酬改定で適正化することが重要としている。
報告書ではこのほか、公的給付範囲の見直し策として、湿布・漢方薬などの保険適用除外や、社会保障・税一体改革で導入が検討されたものの見送られた「受診時定額負担」を提案。ジェネリックの推進や柔道整復師数の抑制・保険適用の厳格化、既に保険適用された医療技術を保険外併用療養に戻す「逆評価療養」も盛り込まれた。