No.4774 (2015年10月24日発行) P.75
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-02-09
人は死を迎える前に、何を食べたくなるのだろう? 豪華な料理、食べ慣れたご飯、それとも、食欲がなくなっているからあっさりと食べやすいもの? ひとつの答えが話題の書『人生最後のご馳走』にある。
ホスピスとして日本でも有数の歴史を誇る淀川キリスト教病院の「ホスピス・こどもホスピス病院」では、週に一度「リクエスト食」として好きな食べ物をオーダーすることができる。そこに入院する悪性腫瘍の末期患者さんたち14人へのインタビュー集だ。何を頼み何を食べられたのだろう。
内容はもちろんさまざま。ステーキやお鮨といったちょっと贅沢そうなものもあるし、ウインナーがのったピザのようにジャンクっぽいものもある。しかし、それぞれに語られるエピソードを聞くと、あぁ、そういうことなのかと納得できる。
お話好きな患者さんたちが選ばれたという面もあるのだろうが、驚くほど明るく、あと何度あるかわからない晩餐に選んだ理由を語っておられる。食べてみたかった、久しぶり、美味しそう、というような安っぽい理由はない。どれもが、人生の思い出に強くリンクしたものばかりだ。
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