厚生労働省が11月10日に公表した2023年度の「介護事業経営実態調査」の結果によると22年度決算における介護老人福祉施設の収支差率は△1.0%、介護老人保健施設は△1.1%となり、13年度に調査を開始して以来、初のマイナスとなった。訪問介護や訪問リハビリテーションなどでは収支差率が上昇したが、収入・費用、職員数は軒並み減少しており、同省は「人材不足でサービスを縮小し、結果として収支差率が上がったということではないか」とみている。
調査は22年度決算分を対象とし、1万6008施設・事業所から回答を得た(有効回答率48.3%)。結果をみると、22年度決算における税引前収支差率は全サービス平均で2.4%となり、前年度から0.4ポイント低下した(コロナ関連補助金・物価高騰対策関連補助金は含まない。以下同じ)。
施設サービスは、人件費や光熱水費の高騰の影響を受け、すべての施設類型で収支が悪化。収支差率は、介護老人福祉施設△1.0%(前年度比2.2ポイント減)、介護老人保健施設△1.1%(2.6ポイント減)、介護医療院0.4%(4.8ポイント減)―となった。
これに対して居宅サービスの収支差率は、①訪問介護:7.8%(前年度比2.0ポイント増)、②訪問入浴介護:3.0%(0.6ポイント減)、③訪問看護:5.9%(1.3ポイント減)、④訪問リハビリテーション:9.1%(9.5ポイント増)、⑤通所介護:1.5%(0.8ポイント増)、⑥通所リハビリテーション:1.8%(2.1ポイント増)、⑦短期入所生活介護:2.6%(0.6ポイント減)、⑧居宅介護支援:4.9%(1.2ポイント増)―などだった。
訪問介護や訪問リハビリテーションは他のサービスに比べて収支差率が高く、数字上は前年度よりも収支が改善したようにみえる。しかし、収支の内訳をみると介護料収入、給与費、その他の介護事業費用、常勤換算職員数のいずれも減少しており、事業所規模の縮小が推察された。
地域密着型サービスの収支差率は、①定期巡回・随時対応型訪問介護看護:11.0%(前年度比2.9ポイント増)、②小規模多機能型居宅介護:3.5%(1.1ポイント減)、③認知症対応型共同生活介護:3.5%(1.3ポイント減)、④看護小規模多機能型居宅介護:4.5%(0.1ポイント増)―などだった。
調査結果は同日の社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会に報告された。