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単純疱疹[私の治療]

No.5196 (2023年11月25日発行) P.51

渡辺大輔 (愛知医科大学皮膚科学講座教授)

登録日: 2023-11-24

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  • 単純疱疹は,単純ヘルペスウイルス1型(herpes simplex virus:HSV-1)または2型(HSV-2)の初感染もしくは再活性化によって生じる疾患である。HSV-1は主として口唇ヘルペスの,HSV-2は主として性器ヘルペスの原因となる。初発,再発,また発症部位や臓器により様々な病態が存在する。HSVは唾液や性交渉を介した接触感染により初感染をきたした後,三叉神経,仙髄神経などの知覚神経節に潜伏感染する。感冒,紫外線照射,性行為や精神的ストレスによりウイルスが再活性化すると知覚神経を順行性に移動し,支配神経領域の皮膚・粘膜に再発病変を形成する。

    ▶診断のポイント

    初感染では2〜10日間の潜伏期を経て,感染部位である口唇,口腔粘膜や外性器にかゆみや違和感を伴った直径1〜2mmの有痛性の複数の水疱が出現する。口腔内の初感染の場合,感染範囲が広く,ヘルペス性歯肉口内炎の像を呈する。痛みが強く,摂食不良の原因となる。第3〜5病日から水疱は破れて融合し,円形の有痛性の浅い潰瘍となり,痂皮化して治癒する。性器ヘルペス初感染では所属リンパ節腫脹を伴い,痛みも強いことが多く,排尿障害をきたすことがあるが,初感染の多くは不顕性感染である。再発例では再発1〜2日前からムズムズ,チクチクした違和感(前駆症状)が出現することが多い。一般に再発性の皮膚病変は初感染に比べ軽症であり,痛みも軽度である。再発頻度は数年に1回~年に10回以上と患者により異なる。再発頻度は時間の経過とともに低下する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    初発例ではできるだけ早期から十分な期間,抗ヘルペスウイルス薬の全身療法を行う。重症例や免疫抑制患者では点滴静注を選択する。再発例では病型や再発頻度に合わせ,適切な治療法を選択する。

    全身療法の基本は抗ヘルペスウイルス薬の内服である。初発病変に対しては,早期に診断し,抗ウイルス薬を全身投与することにより,潜伏感染ウイルス量を減らし,再発回数も減らせる可能性もあるため,十分に治療することが望ましい。全身症状の強い例,免疫抑制患者では入院の上,点滴静注を行う。再発例では従来の5日間治療に加え,patient-initiated therapy(PIT)も行われるようになった。年6回以上再発する性器ヘルペスの場合は,再発抑制療法を考慮する。

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