咽喉頭異常感症は,「患者が咽喉頭に異常感を訴えるが,通常の耳鼻咽喉科的視診で訴えに見合うような異常所見を局所的に認めないもの」と定義されている1)。今日では,真性咽喉頭異常感症と症候性咽喉頭異常感症に分類される2)。
「のどに何かつかえている」「痰がたまっている」「ひりひり,いがいがする」といった咽喉頭の違和感や不快感を主訴に耳鼻咽喉科を受診する患者には日常的に遭遇する。このような咽喉頭異常感を訴える患者は,症状から想像される病気を様々な程度で心配し,原因究明と症状改善を期待し受診することが多い。個々の患者の治療を進める上で原因となる疾病の鑑別診断が重要であるが,患者の不安や診断への期待に配慮した診療も必要である。咽喉頭異常感症は,症状があるにもかかわらず原因となる器質的疾患を特定できない真性咽喉頭異常感症と,診察・検査により原因を特定ないし類推できる症候性咽喉頭異常感症にわけられる2)。なお,多くはないが悪性腫瘍の有無に留意する。
主症状は喉の異常感である。問診では異常感がいつから・どんなときに・どのような感じで生じるか,既往歴,喫煙歴,飲酒歴,嗜好品(コーヒーなど),常用薬を丁寧に聴取し,原因疾患および原因を推測する。続いて,咽喉頭・頸部の診察を行い,視診や触診で咽喉頭異常感の原因となる病変の有無を探索する。さらに鼻腔・咽頭・喉頭を軟性内視鏡で観察し,鼻副鼻腔や咽喉頭の器質的異常の有無を確認する。
症候性咽喉頭異常感症の原因の約8割が局所的要因とされ,うち胃食道逆流症が最も多く40~55%,喉頭アレルギーが12~16%,甲状腺疾患が10%と報告されている3)。その他,局所的症候(慢性炎症,腫瘤,形態異常など),全身的症候(低色素性貧血,糖尿病,内分泌異常,心肥大など),精神的症候(うつ,心身症,不安神経症など)を念頭に,必要に応じて精査を行う。器質的異常を疑う場合には,血液検査や画像検査,上部消化管内視鏡検査など,さらに精査を進める。それらの検査で原因が特定できない場合に真性咽喉頭異常感症となる。
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