SGLT2阻害薬は慢性腎臓病(CKD)においても「体液過剰」を改善し、そしてこの作用は腎機能の高低に影響を受けず、さらに同薬は血漿量にさほど影響を与えていない可能性があるようだ。SGLT2阻害薬の腎保護作用を検討したランダム化比較試験、"EMPA-KIDNEY"亜集団解析の結果、明らかになった。英国・オックスフォード大学のKaitlin J Mayne氏らが12月12日、Journal of the American Society of Nephrology誌で報告した。
EMPA-KIDNEY試験に参加可能だったのは「eGFR<45mL/分/1.73m2(±アルブミン尿)」、または「45-<90mL/分/1.73m2」かつ「尿中クレアチニン/アルブミン比≧200」だったCKD例である。
本亜集団解析では英国とドイツから登録された660例が対象となった。平均年齢は64歳、女性が31%を占めた。eGFR平均値は36.0mL/分/1.73m2、平均体重は88.8kgだった。また21%が心不全を、39%が糖尿病を合併していた。
生体電気インピーダンス分析(BIA)法で評価した体液量などの体組成を、SGLT2阻害薬群(332例)とプラセボ群(328例)間で比較した。1次評価項目は「体液過剰」[Chamney PW, et al. 2007]の是正である。「体液過剰」の定義は「過剰細胞外液>1.1L」とされた。おおむねこの値を超えると「死亡」「心血管系イベント」ともリスクが上昇すると、先行研究が示しているためだという。
・体液過剰は是正
試験開始時に平均0.4Lだった過剰細胞外液はSGLT2阻害薬群でプラセボ群に比べ、2カ月後には0.23L、18カ月後も0.26L、いずれも有意に低下した。またSGLT2阻害薬によるこの低下作用は、「eGFRの高低」や「NT-proBNPの高低」の有無に影響を受けていなかった。
・体液量も減少
SGLT2阻害薬群ではプラセボ群に比べ、「体液量」も0.82L有意に減少していた。うち「細胞外液」の減少幅は0.49L、「細胞内液」減少幅が0.30Lだった(いずれも有意)。
・脂肪・除脂肪組織には変化なし
一方、除脂肪組織指数(kg/m2)/重量(kg)、脂肪組織指数/重量の変化はいずれも、SGLT2阻害薬群とプラセボ群間で有意差はなかった。
・体重
体重はSGLT2阻害薬群でプラセボ群に比べ0.7kg、有意に低下していた。
Mayne氏らはこれらの結果から、SGLT2阻害薬群における体重減少は体液量減少がメインであり、この作用がSGLT2阻害薬の心血管系保護の一機序ではないかと考えている。なおSGLT2阻害薬による細胞外液優位な体液量減少は健常者ですでに報告されており、その際にもそれが心血管疾患、特に心不全例の転帰改善に資するのではないかと考察されていた[Hallow KM, et al. 2018]。
本追加解析はBoehringer IngelheimとEli Lillyから資金提供を受けた。