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【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂①─キックオフ」伊藤 香

No.5212 (2024年03月16日発行) P.60

伊藤 香 (帝京大学外科学講座Acute Care Surgery部門病院准教授、同部門長)

登録日: 2024-03-05

最終更新日: 2024-03-05

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2014年に日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会の「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン〜3学会からの提言〜」が発表されてから10年が経過し、現在、当ガイドラインの改訂作業に取り組んでいる。

当ガイドラインが誕生するまでの経緯をたどると、1990〜2000年代前半の集中治療終末期医療に関して刑事的介入がなされた事例(東海大学[1991年]、川崎協同病院[1998年]、射水市民病院[2000年]、等)をきっかけに、2006年に日本集中治療医学会が「集中治療における重症患者の末期医療のあり方についての勧告」を、2007年には日本救急医学会が「救急医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)」を、2010年には日本循環器学会が「循環器疾患における末期医療に関する提言」を相次いで発表した。そして、それら3学会のガイドラインの流れを汲んで作成されたのが、当ガイドラインである。

しかしながら、当ガイドラインが発表されて10年が経ち、超高齢化社会を迎えた日本の救急・集中治療の現場の様相も当時とは変わりつつある。すなわち、もともと様々な慢性重症疾患が併存していたり、純粋に高年齢で虚弱となり人生の最終段階にあったりする患者が、急性な状態悪化で救急搬送され集中治療室へ緊急入室することが増加した。それらの患者層は必ずしも根治的な治療を求めているとは限らず、患者が疾患や人生の軌跡のどこに位置しているかによって、患者の価値観や選好を反映させた治療の選択をすることが大切である。

当ガイドラインは、「終末期の例」として4つのパターンを例示し、適切な意思決定のプロセスを経れば、延命治療の終了も問題ないと明記している。ただ、緩和ケアの重要性にも言及しているものの、終末期の定義が限定的であること、また、実際に延命治療を終了した後の緩和ケアの具体的なガイダンスがないことから、実際に、抜管を含めた人工呼吸器の終了を希望する患者や家族がおり、その判断が医療者からも適切と思われた場合であっても、その後のケアや医療に関しての知識や経験が浸透しておらず、結果的に患者や家族にとって最善の終末期を提供できないという声も聞く。

今回、当ガイドラインの改訂に着手するにあたり、集中治療終末期患者によりよい医療を提供できるように、終末期の定義を見直し、適切な意思決定支援の方法を改めて強調し、緩和ケアに関するガイダンスを明記することを改定のポイントとし、従来の3学会に日本緩和医療学会を加えた、「4学会のガイドライン」に発展させることを目標としている。

来る2024年3月16日、第51回日本集中治療医学会学術集会のシンポジウム15「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン〜3学会からの提言〜改定のポイント」にて、各学会代表者と改訂のポイントを議論し、改訂版ガイドラインの骨子を発表する予定である。ぜひ、刮目されたい。

伊藤 香(帝京大学外科学講座Acute Care Surgery部門病院准教授、同部門長)[4学会緩和ケア

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