【質問者】赤松直樹 国際医療福祉大学脳神経内科教授
【特徴的な臨床症状・随伴症状から診断するアルゴリズムやスコアが提唱された】
21世紀に入り,N-メチル-d-アスパラギン酸(N-methyl-d aspartic acid:NMDA)受容体や電位依存性Kチャネル〔voltage-gated potassium channel(VGKC)複合体:現在はleucine-rich glioma inactivated 1(LGI1),contactin-associated protein-like 2(Caspr2)など標的抗原が判明〕など,神経細胞表面やシナプス間隙の抗原を標的とする抗体が発見され,シナプスを中心とした機能異常を惹起し,自己免疫性脳炎を起こすことが明らかになってきました1)。抗体の種類によって特徴的な症状がありますが,大きくまとめると,急性か亜急性発症(通常3カ月以内)の近時記憶障害,精神症状(幻覚妄想,易怒性,性格変化など),てんかん発作,意識障害,運動異常症(ジストニア,ジスキネジア)などを呈します。
内訳としては抗NMDA受容体脳炎,抗LGI1抗体陽性脳炎の順で多いとされており,国内の疫学調査でも同様の結果となっています。早期に診断し免疫治療を行えば治療できる病態として注目されています。自己免疫性てんかんは,自己免疫性脳炎の不全型で,てんかんを主徴とする一群と位置づけられます。各種抗神経抗体の測定は全世界で困難であり(本邦では,NMDA受容体抗体・LGI1抗体が保険外で測定可能,GAD抗体は保険で測定可能),抗体を用いない診断アルゴリズム2)やスコア3)が提唱されています。
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