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【識者の眼】「国際的なワクチン情報ネットワークにおける日本の責任は」勝田友博

No.5222 (2024年05月25日発行) P.63

勝田友博 (聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)

登録日: 2024-05-14

最終更新日: 2024-05-14

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先日、フランスのAnnecyで開催されたGlobal Vaccine Data Network(GVDN)の国際会議に参加した。GVDNはその名の通り国際的なワクチン情報ネットワークであり、世界中のワクチン接種データを収集し、その効果および安全性を迅速に解析し、世界各国で共有することを活動の主目的としている。GVDNの公式サイトによると世界26カ国から31のサイトが参加しているが、現時点で日本は実際の調査には参加していない。

今回の会議では、3日間にわたり様々な調査結果が報告されたが、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)ワクチンに関する議題が大半を占めていた。多くの場合、プレゼンテーションの冒頭で、それぞれの調査に参加した国が世界地図上に掲げられた国旗とともに紹介されたが、残念ながら「日の丸」が掲げられる機会は3日間で一度もなかった。

COVID-19ワクチンは、異例の短期間で開発されたため、世界規模での迅速な有効性および安全性評価を必要とした。実際、国内でCOVID-19ワクチンを接種する際、我々日本の医師は、主に海外で報告されたエビデンスをもとに様々な判断をした。その後、国内からもCOVID-19ワクチンに関するエビデンスが報告されたが、残念ながら日本は世界的規模での安全性および有効性に関する調査に参加することができなかった。その原因は複数あるが、筆者は特に国内において予防接種の能動的調査システムが設立されていないことが主な原因であると考えている(詳しくはNo.5156の当欄を参照)。

GVDNはCOVID-19ワクチンに限らず、多くの既存ワクチンの安全性および有効性調査を行っているが、日本はそれらのワクチンに対してもまだ情報を提供できていない。さらに今後、万一COVID-19と同様の新興感染症のパンデミックが発生した場合、日本はこのまま、エビデンスを使用させてもらう国に甘んじるのではなく、重要なエビデンスを迅速に提供できる重要な国の1つとして、一役を担うべきではないだろうか。今回の会議後、日本からもGVDNにデータを提供する方向で準備を進める予定となっている。

勝田友博(聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)[GVDN[予防接種の能動的調査システム]

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