昨今,「難治性関節リウマチ(difficult-to-treat rheu-matoid arthritis:D2TRA」と言えば○〇薬の早期使用を謳うメーカー主催の講演会が多い中,あまりその手の影響を感じさせないレビュー雑誌が出版されたようだ。持続的寛解が現実的なものとなったリウマチ外来において,D2TRAはいまだに心苦しい状況であり続けている。ステロイドの使用はphase Ⅰだけにしておきましょう,といった教科書的なルールを超越した難題がまさにD2TRAであり,現代のunmet needsと言えよう。私の外来でもすぐに思い浮かぶのは,低用量ステロイドはもちろん,すべてのJAK阻害薬を投与しても低疾患活動性に至らず身体機能が蝕まれつつある患者たち……。外来診療を始めたばかりの若手医師も,つらく厳しい状況を経験しつつあるのではないだろうか。
本書は,そのD2TRAに立ち向かうことを目的として編集された。初めに欧州リウマチ学会(EULAR)推奨を踏襲した形の日本のRA診療において,一味違う米国リウマチ学会(ACR)ガイドラインの特徴を紹介しており,私たちの現在の診療の根拠や他の選択肢の可能性について考えさせられた。次いでD2TRAの定義から,さらなる分類の提案,各々の病態への合理的な対処法がレビューされている。D2TRAに出会ったら「まず診断を見直してみましょう」とは,耳に痛い話である。X線変化が明らかとなって初めて,乾癬性関節炎であったのか……と悟った経験が思い起こされた(その点,本書は血清陰性関節リウマチの診断に警鐘を鳴らすものであった)。
また,専攻医にとっても基本的なtreat-to-target(T2 T)の考え方,基本的な薬剤のエビデンスが解説されている。ステロイドの局所投与についてのまとめは,いかにもD2TRAの目的にかなったものである。難治性RAの候補になりうる慢性感染症や肺・腎障害の合併例について問題提起と解決策が述べられており,読み応えがあった。担がん患者や経済的弱者までも取り上げられており,実臨床の難治性RA患者像が網羅されている。
本書はすべてのリウマチ医にとって,目の前の如何ともしがたい状況を打開するためのヒントを与えてくれるであろう。