減圧症,動脈ガス塞栓症に対しては,早期の高気圧酸素療法(再圧治療)が最も重要である。高気圧酸素治療装置には,1名のみ収容可能な第1種装置と2名以上収容可能な第2種装置がある。第1種装置は患者1名を収容し純酸素で加圧を行う。第2種装置は患者数名とスタッフを同時に収容することができ,空気で加圧を行う。重症患者は第2種装置で治療する。医療機関によって保有する装置が違うため,第2種装置を保有する施設を把握し,搬送体制を確立しておく。また,「米国海軍ダイビングマニュアル」に準拠した「再圧治療表」に則った治療の準備をしておく。
潜水に関連する病態には,「減圧症」と「動脈ガス塞栓症」がある。2つの病態を合併することも多い。診断を進める上で,次の4点を適切に問診すると診断が容易になる。
①問題を生じた潜水のプロフィール(最大深度,滞底時間,浮上速度)
②疼痛症状の性質
③発症時期(滞底時,浮上時,潜水終了後何分か)
④症状の変遷
減圧症Ⅰ型は比較的軽症であり,臨床症状としては皮膚の発赤(瘙痒を伴う),大理石斑,四肢の浮腫,関節痛を呈する。
減圧症Ⅱ型は比較的重症であり,脊髄型,脳型,肺型と内耳型,その他(Ⅰ型以外の症状)に分類される。脊髄型では知覚・運動障害,膀胱直腸障害などが生じる。脳型においては意識障害や痙攣,片麻痺などが生じる。肺型では胸痛,喘鳴,呼吸困難,咳嗽などが生じる。内耳型ではめまい,嘔気,聴力障害が生じる。その他では全身倦怠感や疲労感が生じることもある。
減圧症Ⅲ型は減圧症と動脈ガス塞栓症が合併した病態である。
塞栓部位により症状が異なり,脳では意識障害,痙攣,片麻痺,視力低下など,心臓では心停止,不整脈などが生じる。
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