シャルコー関節は,末梢神経障害を合併した糖尿病患者に多くみられる骨・関節の破壊性の関節症である。足部・足関節に発生し急速に進行する関節破壊が特徴で,進行すると骨・関節の破壊および靱帯の弛緩による足部・足関節の不安定化,および足部アーチの扁平化,後足部の内外反変形などの著明な変形を生じる。
症状は急速に発症する足部の腫脹・熱感・発赤であるが,末梢神経障害のため疼痛は軽度のことが多い。感染症や痛風,深部静脈血栓症などとの鑑別が必要である。
シャルコー関節では関節破壊が急速に進み,放置すると足部の扁平化が進行して舟底型変形をきたして足底に骨性突出を生じたり,後足部の内外反変形により足底接地での歩行ができなくなったりする。外果や内果など足底以外の部分での荷重を継続していると潰瘍が形成され,骨髄炎などの感染症を併発してしまうと切断を余儀なくされることもある。早期に診断し治療を開始する必要があるが,早期では単純X線写真や臨床検査で明らかな異常を認めないこともあるため,感染症と鑑別することが困難な場合も多く,診断に難渋することがある。一方,荷重位と非荷重位を撮影することにより不安定性が明らかになる場合がある。また,MRIで骨髄浮腫の所見が認められることもあり,補助診断として有効である。
糖尿病患者から「足が突然赤く腫れて熱くなってきた」という訴えがあったら,たとえ診断が確定していなくても,シャルコー関節を念頭に置いて治療を開始する。シャルコー関節は軽度の腫脹,発赤を認めるだけの前駆期から単純X線写真で関節破壊や関節内骨折,骨片形成を呈する進行期,そして癒合期を経て再生期となって炎症は鎮静化するが,炎症は平均15カ月程度持続する。炎症が進行しているときに荷重することは非常に危険であり,炎症を助長する可能性がある。治療の目的は,炎症が落ちつくまでの間,足にかかる負荷を軽減させて変形を防ぐことである。そのため,ギプスで固定し体重をかけないように指導することが重要である。腫脹や熱感などの炎症所見が消失し,単純X線写真で骨癒合が認められるまで固定は継続する。
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