脳腫瘍は小児期において最も高頻度に認められる固形腫瘍である。組織学的に非常に多様であり診断が困難な症例も少なくないため,従来の病理学的手法だけでなく,腫瘍特異的な遺伝子異常を同定するための分子遺伝学的解析も,正確な診断を得るために積極的に実施する必要がある。治療は手術,放射線治療,化学療法が必要性に応じて行われるが,疾患により手術の目的,放射線照射野・照射量,使用する化学療法薬が大きく異なり,また,同じ疾患でも発症年齢,発症部位によって治療が異なる場合があるため,その診療にあたっては幅広い知識と経験が必要である。
腫瘍の発症部位により臨床症状は異なるが,大半の小児脳腫瘍症例は頭痛など非特異的な症状で発症しており,症状のみから脳腫瘍の早期診断につなげることは困難な場合が多い。
画像診断としてMRIが有用であるが,大半の症例では診断確定に病理診断が必要である。びまん性橋膠腫(DIPG)では,典型的な画像所見であればMRIのみで診断してよい1)が,予後良好な小児低悪性度神経膠腫をDIPGと誤認されるケースもあるため,慎重に診断を行う必要がある。
病理組織所見はWHO分類2)をもとに評価されるが,2021年に同分類は大幅な変更がなされ,病理診断と合わせた統合診断として,分子遺伝学的解析が多くの腫瘍の診断基準に取り入れられている。
小児脳腫瘍は稀少疾患ながら,欧米を中心として諸外国からまとまった症例数の報告が多くの疾患で存在するため,臨床試験に参加する症例以外では,国際的に標準とみなされているプロトコルでの化学療法,放射線治療を行うべきであると考える。下記に主要な疾患の治療概要を記す。
残り1,826文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する