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総合診療クリニック経営ノウハウ[〈開業医応援プログラム〉総合診療クリニックの創り方(4)]

No.5232 (2024年08月03日発行) P.51

菊池大和 (きくち総合診療クリニック院長)

登録日: 2024-07-31

最終更新日: 2024-07-30

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今回はクリニックを大きくしていくときに,私が常日頃思っていること,気をつけていることを経営者目線でお話ししたいと思います。

きくち総合診療クリニックの患者数は安定して増患していることは前回お話ししました。患者数が増えればスタッフも必要になります。開業当初は,もちろん医師は私1人でした。看護師2人,看護助手1人,医療事務4人,放射線技師1人で始めました。現在,開業から8年目を迎え,常勤・非常勤・スポットを合わせれば80人ほどになります。もちろん,急に増やしたわけではありません。毎月の患者数,年間の患者数,新患数などから,利益に対しての人件費を顧問税理士と考えながら,徐々に増やしていきました。

スタッフを増やすときに考えること

開業当初は医師1人で始めましたが,すぐに非常勤の医師の採用を始めました。それは患者数が増えてきて,待ち時間が長くなってきたからです。また,この感じなら増患は間違いないと判断しました。医師の人件費は時給1万~1万5000円で安くないので,気をつけないと経営に響きます。私は患者数が増えて,患者さんの待ち時間が1時間を超えてきたら,医師の増員を考えています。

クリニック内での看護師業務は多岐にわたります。できる看護師がいるクリニックは,医師の業務が楽になります。患者さんの呼び入れや検査,説明,書類など看護師業務は大変ですが,看護師を増やすタイミングは検査が多くなってきたときです。検査が多くなると,看護師のストレスも増えますし,ミスも生じます。看護師の時給は2000円ぐらいですが,余裕を持って採用したほうが無難です。休みも取りやすくなりますし,お互いに話し合いもでき,仕事がしやすくなると思います。夏休みや有休を取りやすい職場環境はとても大切ですので,看護師に限らずスタッフの休みを考えることは最優先事項になります。

2回の拡張のタイミングと増患

ほとんどのクリニックは,開業した場所から拡張や移転することはあまりないと思います。きくち総合診療クリニックは,運よく2度の拡張をすることができました。患者数が増えてきたこともあり,拡張できたことはラッキーでした。開業時は63坪の1階のテナントでした。1回目の拡張は3年目,クリニック2階の120坪のテナントが空いたタイミングもあり,階段でつなげて拡張しました。そのときに,リハビリ室,MRI室を作り,整形外科,小児科の医師を採用し,患者数が急激に増えました。

そして新型コロナとの戦いの真っ最中の開業5年目,2階の隣の250坪のテナントが空くタイミングで2回目の拡張を決めました。このときは銀行から融資を受け,経営の安定化を図りました。新型コロナ流行時でも発熱患者をしっかり診ていたこともあり,患者さんは離れることなく,新患が増加しました。そのときの患者さんは今でも普通に通院しています。

クリニックの経営状況は患者数に比例します。お金のためではなく,患者さんをしっかり診療することが,結果的に経営の安定につながります。きくち総合診療クリニックは,これまで自費診療に走ることはなく,保険診療をしっかりやることがとても大事だと思っています。そして,地域医療に貢献するため,自分に何ができるのかを自問自答して,常に新しいことにチャレンジしています。患者さんが求める医療機関になれば,経営は安定するということは,はっきりと言えるでしょう。

菊池 大和/きくち やまと (きくち総合診療クリニック院長)
2004年福島県立医科大学卒業。09年湘南東部総合病院外科科長/救急センター長,16年座間総合病院総合診療科,17年開業。

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