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非アルコール性脂肪肝炎(NASH)〔メタボリック関連脂肪肝炎(MASH)〕[私の治療]

No.5232 (2024年08月03日発行) P.36

江口有一郎 (ロコメディカル総合研究所所長)

登録日: 2024-07-31

最終更新日: 2024-07-30

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  • 非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)は,肝の慢性炎症と線維化を伴い肝硬変や肝癌へ進展する。糖尿病,心筋梗塞,脳梗塞等の動脈硬化性疾患や,肝癌以外の他臓器がんの併発も多く,肝機能検査や腹部超音波検査,腹部CT検査などの肝癌の定期的なサーベイランスに加え,動脈硬化性疾患や全身のスクリーニングも行う。2023年6月に欧米で病名の見直しがあり,脂肪肝全体を脂肪性肝疾患(steatotic liver disease:SLD),従来の非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)はメタボリック関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction associated steatotic liver disease:MASLD),NASHはメタボリック関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction associated steatohepatitis:MASH)と変更された1)。本稿では新病名を用いて解説する。

    ▶診断のポイント

    MASHの確定診断には肝生検が必須であるが,日常診療では腹部超音波検査やフィブロスキャン,MRエラストグラフィなどの肝硬度測定やFIB-4インデックスなどの非侵襲的方法を用いて,線維化を推定し診断の参考とする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    MASHの治療方針は,MASLDと同様に内臓肥満があれば,食事・運動療法が前提である。2020年に6年ぶりに改訂された『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』2)では,食事・運動療法は7~10%の減量を目標とすることが明記された。十分な改善がない場合は,肝脂肪化や炎症,肝線維化の改善をめざし薬物療法を行う。また,高度肥満(BMI>35)を伴う場合は減量手術も選択される。日常診療での治療評価として3~6カ月の期間で,体重や血清ALT値,画像検査による肝脂肪化の評価や肝線維化の改善に関して画像検査を用いる。

    【治療上の一般的な注意】

    いまだMASHに対する保険収載された薬剤はないため,併存する生活習慣病に薬物治療が必要な場合,その併存症への治療薬で,MASHの改善も期待される薬剤を用いる。現在,MASHに対して複数の国際臨床試験が実施されているが,まだ臨床適応には至っていない。

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