SGLT2阻害薬は,肝脂肪化の改善,ALTの低下作用が多数報告されている。GLP-1アナログ製剤やピオグリタゾンは,RCTでMASHの病理学的な改善が報告されている。
一手目 :デベルザⓇ20mg錠(トホグリフロジン水和物)1回1錠1日1回(朝食後)
二手目 :〈処方変更または血糖コントロールとしても不十分であれば一手目に追加〉オゼンピックⓇ注(セマグルチド)1回0.5mg 週1回〔皮下注,朝または夕(アドヒアランスを考慮し就寝前でもよい)〕
三手目 :〈処方変更または一手目に追加,もしくは一手目and/or二手目に追加〉アクトスⓇ30mg・15mg錠(ピオグリタゾン塩酸塩)1回1錠1日1回(朝食後)
なお,メトホルミンは,MASHに対する直接的有効性に関するエビデンスはないが,肝癌の発生に抑制性に働くことが海外のメタアナリシスで報告されている。一方,重篤な肝障害には禁忌である。
ACE阻害薬やARBは,肝線維化に抑制性に作用することが報告されており,MASHの病態改善に寄与する可能性が考えられるが,効果は比較的マイルドである。
一手目 :オルメテックⓇ10mg・20mg錠(オルメサルタン メドキソミル)1回1錠1日1回(朝食後),またはアバプロⓇ50mg・100mg錠(イルベサルタン)1回1錠1日1回(朝食後)
一手目 :ユベラⓇ50mg錠(トコフェロール酢酸エステル)1回1~2錠1日2~3回(食後)
一手目 :パルモディアⓇ0.1mg錠(ペマフィブラート)1回1~2錠1日2回
MASLDの約40%の症例で皮膚の瘙痒症を有していると報告され,抗瘙痒薬として以下の薬剤を用いる。
一手目 :レミッチⓇ2.5μg OD錠(ナルフラフィン塩酸塩)1回1錠1日1回(夕食後または就寝前)
一手目 :リーバクトⓇ配合顆粒(イソロイシン・ロイシン・バリン)1回1包(4.15g)1日3回
代償性肝硬変であれば,減量の継続と併存症の治療を継続する。非代償性肝硬変に進展している場合は,それに対応した食事・運動療法を行うが,運動療法に関する十分なエビデンスはない。なお,末期肝不全症例には肝移植が治療適応となる。
生活習慣病全般と同様,食事・運動療法の継続が大前提であり,その変容と継続の支援のみならず,ドロップアウトやリバウンドを意識した診療姿勢や家族の協力が必要であり,多職種の医療職や一般,患者,患者家族らを対象として各都道府県で養成される肝炎医療コーディネーターの活躍も期待されている。
血液検査(血小板減少や肝線維化マーカー高値例等)や画像検査での肝線維化進展が予想される症例(ステージ2以上が理想。前肝硬変状態であるステージ3以上は必須)は,一度は最寄りの肝臓専門医への受診と正確なステージング,その後の病診連携での継続加療が勧められる。
【文献】
1)Rinella ME, et al:J Hepatol. 2023;79(6):1542-56.
2)日本消化器病学会, 他, 編:NAFLD/NASH診療ガイドライン 2020. 改訂第2版. 南江堂, 2020.
江口有一郎(ロコメディカル総合研究所所長)