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転移性肝腫瘍[私の治療]

No.5236 (2024年08月31日発行) P.42

美馬浩介 (熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学)

林 洋光 (熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学講師)

馬場秀夫 (熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学教授)

登録日: 2024-08-29

最終更新日: 2024-08-27

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  • 転移性肝腫瘍とは,肝臓以外に発生した腫瘍が肝臓に転移したもので,消化器癌(食道癌,胃癌,大腸癌,胆道癌,膵癌)からの転移頻度が高い。消化器癌以外の原発巣として膵消化管神経内分泌腫瘍(gastroenteropancreatic neuroendocrine tumor:GEP-NET),消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST),乳癌,卵巣癌,肺癌,悪性黒色腫が挙げられる。分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法の進歩により転移性肝腫瘍を有する患者の予後が改善し,一部の転移性肝腫瘍では転移巣の切除により,長期生存が望めるようになってきた。本稿では,原発巣ごとに転移性肝腫瘍の治療方針について述べる。

    ▶診断のポイント

    転移性肝腫瘍の画像診断には,腹部超音波,ダイナミックCT,Gd-EOB-DTPA造影MRIが有用である。転移性肝腫瘍が疑われた際には,各がん腫の腫瘍マーカー測定,上部および下部内視鏡検査,FDG-PET(PET-CT)を行い,原発巣を検索する。GEP-NETの肝転移が疑われた場合には,ソマトスタチン受容体シンチグラフィ(SRS)が有用である。グレード1~2の神経内分泌腫瘍ではSRSの陽性率が高く,グレード3ではSRSよりFDG-PETの陽性率が高くなると報告され,ソマトスタチンアナログ製剤の治療効果予測に有用である可能性がある1)

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    転移性肝腫瘍の治療方針は,その原発巣によって異なる。2021年に発刊された「転移性肝がん診療ガイドライン」では,肝転移巣の外科切除適応に関して原発巣別に5つのグループ(A~E)にわけてアルゴリズムが示されている2)

    グループAは肉眼的ながんの遺残がある切除でも肝切除の適応となる卵巣癌が該当し,すべての転移巣を含めて可及的に切除するprimary debulking(減量手術)が基本とされる。グループBはGEP-NETが該当し,R0可能なG1もしくはG2の肝転移に対しては肝切除を行うことが強く推奨される。グループCは大腸癌とGISTが該当し,R0可能な患者では肝転移に対する肝切除が長期予後を改善させると報告されている。

    グループDは胃癌と胆道癌が該当し,肝転移に対する肝切除についてはR0であっても原則推奨されないが,異時性,3個以下,3~5cm以下の小病変など限られた患者に対する肝切除において良好な成績が報告されている。グループEは乳癌と膵癌が該当し,原則肝転移に対する肝切除は推奨されないが,R0切除可能かつ肝外転移なしかつ原発切除から一定の観察期間経過かつ化学療法奏効など,限られた条件のもとで肝切除が有効であると報告されている。

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