門脈圧は,腹腔内臓器からの血流量と肝臓の毛細管網を中心とする肝内の血管抵抗によって規定される。門脈圧の正常値は100~150mmH2Oであり,これが常時200mmH2O(14.7mmHg)以上に亢進し,その結果として様々な症状(食道・胃静脈瘤,腹水,肝性脳症,汎血球減少,門脈圧亢進性肺高血圧症,門脈血栓症)が現れるのが門脈圧亢進症であり,単一の疾患名ではなく臨床概念である。近年,フィブロスキャンによる測定で20kPa以上,さらにはMRエラストグラフィーによる測定で4.2~4.8kPaを門脈圧亢進症と定義するとの考え方も広まっている。
上部消化管内視鏡検査で,肝硬変症の7割に存在すると言われている。食道・胃静脈瘤の初回出血を起こす有意な因子は,静脈瘤の大きさ,RC(red color)サインの有無,そしてChild-Pugh scoreであるとされている。つまりsmall varices(F1程度)であれば,RCサイン陰性の場合には予防的治療の適応とはならない。
胃静脈瘤に関しては,出血の危険因子に選択されるものとして,静脈瘤の存在部位・形態,RCサインの有無,そして肝予備能が挙げられる。
門脈圧は肝静脈楔入圧と同等と言われている。一般には,肝静脈圧較差(肝静脈楔入圧-自由肝静脈圧)が10mmHg以上を門脈圧亢進症と定義する。前述のように,フィブロスキャンによる測定で20kPa以上を門脈圧亢進症と定義するという考え方も広まっている。
触診での波動の確認は,腹水の中等量の貯留がないと困難なことが多い。腹部超音波検査は,貯留する腹水量の診断にきわめて有用である。
「肝硬変診療ガイドライン2020」において,不顕性肝性脳症の診断が重要とされており,外来でも可能な数字追跡試験(number connection test)は診断に有用とされる1)。
肝疾患由来の血小板減少症は,脾腫が原因であることが多い。腹部超音波で脾門部から脾前縁までの径(a)とこれに直交する径(b)の積で求められる面積(a×b)が20cm2以上を脾腫と診断している(千葉大学第一内科の計測法)。
臨床症状において,急激な腹水や胸水の増加,発熱を認める場合に疑われる。腹部超音波において急性門脈血栓は低エコーであり,慢性門脈血栓は高エコーを示す場合が多い。Dダイマー検査値は,治療効果判定にきわめて有効である。
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