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特集:子どものミネラル・ビタミン欠乏症予防とそのサポート

No.5239 (2024年09月21日発行) P.18

高増哲也 (神奈川県立こども医療センター地域保健推進部長/アレルギー科医長)

登録日: 2024-09-20

最終更新日: 2024-09-18

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1989年広島大学医学部医学科卒業。東京大学小児科,茅ヶ崎市立病院小児科,横浜市立大学寄生虫学講座助手を経て,1999年から神奈川県立こども医療センターアレルギー科医長。2005年から同センター栄養サポートチーム座長。2022年より同センター地域保健推進部長。

1 食べることの生物としての意味,人間にとっての意味をとらえ直す

  • 生物は生きるためにエネルギーを必要とするが,食べることはそれを得ることである。
  • 人間にとっての食べることの意味とは,栄養・生きがい・社会とのつながりである。

2 食物がたどる道のり

  • 食物がたどる道のりを11ステップに分割してみていく。

3 生物を構成する物質

  • 無機質・有機物質を概観する。

4 ミネラル・ビタミン欠乏症の考え方

  • ミネラル・ビタミン欠乏症について,一般的な食事では起こりにくいが,少食,偏食,経腸栄養・静脈栄養では起きうる。その傾向について知り,注意を払う必要がある。

5 ミネラル・微量元素各論

  • ミネラルナトリウム,カルシウム,リン
  • 微量元素鉄,亜鉛,銅,ヨウ素,セレン

6 ビタミン各論

  • 水溶性ビタミンB群,C
  • 脂溶性ビタミンA,D,E,K
  • ビタミン様物質カルニチン,コリン

7 栄養のバランス,フードファディズム・ヘルスリテラシー

  • 体に良い物質/悪い物質があるという考えではなく,バランスが大事である。
  • 現代社会でバランスを崩しやすいものについて,フードファディズムへの注意,ヘルスリテラシーについて解説する。

1 食べることの生物としての意味

栄養は,健康を維持・回復するために,その土台となるものである。私たちは通常,それを口から食べたり飲んだりすることで取り入れている。

生物は生きるためにエネルギーを必要とするが,自らエネルギーをつくりだすことはできず,エネルギーを消費し同化(合成)することによって高分子をつくりだし,高分子を異化(分解)することによってエネルギーを得ている。同化のスタート地点は植物の細胞内小器官である葉緑体で太陽からのエネルギーをもとに行われているものである。一方,異化の大部分は,植物・動物共通の細胞内小器官であるミトコンドリアで行われている。生物が生きるためのエネルギーは,元をたどれば太陽からのエネルギーがいったん高分子となって,それが食物として届けられていると,とらえることができる。

人間が食べることの意味

次に,人間にとって「食べること」の意味を,改めてとらえ直しておきたい(図1)。第一に,食べることは生きるためのエネルギーの源,すなわち栄養を手に入れる手段である。また,体をつくる元となっている。生物学的な意味はこれにあたる。第二に,食べることは生きる楽しみを感じる時間である。毎食,おいしく食べることは,生きがいの中心とも言える。食べることに問題が生じているシチュエーションでは,気持ちの面も気にかける必要がある。第三に,食べることは家族や仲間とのふれあいの場であり,団らんの楽しい時間である。食べることに問題が生じると,社会的な問題も同時に生じているということも,気にかける必要がある。この3つのポイントは,第一から順に,ミクロな視点からマクロな視点で見ているものであり,食べることを考察する上で,どのレベルの視点も等しく大切なものである。


2 食物がたどる道のり

食物がたどる道のりを図2に示す。まずは,食物の存在を認め,食べようとする(摂食意図)ことから始まる。次に,食物を口に運ぶ(捕食)。口の中に入った食物を嚙み砕き(咀嚼),飲み込む(嚥下)。ここまでが食物を「食べる」という行為である摂食嚥下に相当する。

その後は,蠕動運動で食道,胃,腸,と消化管内を移動し,酵素などで分解(消化),消化管粘膜から血液中に移動(吸収),さらにインスリンなどの働きにより血液から細胞内に移動し,細胞質で解糖系による代謝,ミトコンドリアに移動してクエン酸回路,電子伝達系による代謝でエネルギーをATPという形にして手に入れるに至る。最後に,消化管内で消化・吸収されなかったものを排泄するというステップまで加えて,食物がたどる道のりの全体像となる1)

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