失われた30年を経て,日本もようやくインフレがある世界に突入しようとしています。
医師は相対的にインフレに弱く,今後は複利を利用して長期投資を行うことが資産防衛の上で重要になってきます。特に米国株は長期でみると年率6.5~7%で成長を続けており,すべての暴落を克服して上がり続けています。債権はインフレを吸収できず,リターンは株に劣りますが,価格変動が少ないという特徴があります。複利効果を最大限活用することが重要で,投資を早く始めるほど有利です。
若手のうちから給与が比較的高い医師は長期投資に向いており,資産の一部を米国株などに投資することで,経済の発展に合わせて資産を増加させることが重要です。
臨床に携わる先生方は日々の診療や研究で忙しく,お金のことを勉強してこなかったという方も多いかと思います。しかし,昨今の円安や物価高,新NISAなどの盛り上がりをみて,投資に興味を持った先生方も多いのではないでしょうか。私は脊椎外科医として臨床に携わりつつ,様々な投資に興味を持ち,医師向けに講演や執筆活動をしてきました。今回から,投資の初心者である先生向けに,投資の基本についてお話ししたいと思います。
なお,本記事は筆者の個人的な意見にすぎません。また,特定の投資方法の効果を保証するものではありません。最終的な投資は自己責任でお願いします。
最近,モノの値段がどんどん上がっています。物価が高くなることをインフレと言いますが,モノの本質的な価値が急に上がったわけではありません。貨幣の価値が下がることで,見かけ上の値段が上がったように感じているのです。
世界各国は「穏やかなインフレ」をめざしています(図1)。モノの値段が来年少しだけ上がるとしたら,その前に手に入れたいと思いますよね。こうしてモノが売れることで企業収益が拡大し,賃金が上昇します。賃金が上昇している中では,モノの値段を上げても売れますから,物価上昇へとつながります。これを「経済と物価の好循環」と言います。ただ,インフレも強すぎると社会不安をきたしてしまいます。基軸通貨であるドルを支配する米国が年間2%のインフレ目標を立てているため,各国も2%を目標に経済政策を決めています。当然,日銀もインフレをめざしていますので,日本でもインフレが続く前提でいたほうがよいでしょう。
医師はインフレに弱いと私は思っています。これは,診療報酬改定で徐々に医療費が削減される一方,コメディカルの給料は上げなければいけないため,そのしわ寄せが医師に来てしまうからです。そのため,医師はインフレに対抗できるように資産形成を行う必要があると考えています。