突発性難聴は原因不明の疾患であるが,側頭骨病理による研究,脳血管障害との関連性についてのコホート研究などから,内耳における循環障害,ウイルス感染などが主因として推定されている。
診断基準として,3つの主症状(突然発症,高度感音難聴,原因不明)をすべて満たす場合に診断される。難聴の改善・悪化の繰り返しはなく,通常一側性であるが,稀ながら両側性もありうる。難聴に加えて耳鳴,耳閉感,めまいなどを伴うこともある。
純音聴力検査での隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴が72時間以内に生じており,他の疾患〔聴神経腫瘍,急性低音障害型感音難聴(125Hz,250Hz,500Hzを中心とした難聴),メニエール病,外リンパ瘻,機能性難聴〕が除外される必要がある。聴神経腫瘍の診断には内耳道MRI,外リンパ瘻の診断には鼓室洗浄液からCTP(cochlin-tomoprotein)の検出,機能性難聴の診断には耳音響放射(OAE)や聴性脳幹反応(ABR)などの他覚的聴覚検査が必要である。
難聴の発症から2週間以内であれば,治療対象になりうる。治療を行っても3人に1人しか改善しないことを伝える。治療開始を急ぐ必要があるため,諸検査と並行しながら治療を行う。治療の中心はステロイドとなるが,無作為化比較試験を組むことが倫理上も難しいことから,ステロイドの効果についてエビデンスレベルの高い論文がないというのが現状である。ステロイドに加えて血管拡張薬,ビタミン製剤などが用いられている。
糖尿病合併例では,血糖コントロールをしながらステロイド投与を実施することになり,入院を要する。
また,ステロイド鼓室内投与が,初期治療として,あるいはステロイド全身投与無効例においてはサルベージ治療として,行われることもある。高気圧酸素治療を行う場合もあるが,設備を整えている医療機関が限定されており,さらにエビデンスもまだ不十分であることから,強く推奨されるほどの治療ではない。
諸家の報告があるが,高齢者,心臓疾患合併例,高度難聴,治療開始が発症後1週間以降,めまい合併例は予後不良である1)。また,初診時の血清フィブリノゲン高値例も予後不良であると報告されている2)。
急性期治療の詳細については「急性感音難聴診療の手引き2018年版」3)も参照頂きたい。
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