【検出感度の低下は避けられないが,複数箇所から採取する方法はあるかもしれない】
血液培養の意義は,①菌血症の存在と関連した感染症の診断,および②起因菌がわかっている状況において治療効果を判断する陰性確認,の2つがあります。診断に関しては,菌の検出感度とコンタミネーションの除外という観点から,適切な量と複数箇所から検査を行うことが重要ですが,日本感染症学会の推奨やガイドラインに厳密に従ったとしても,血液培養検査の適応範囲は広く,バイオマーカー等の利用で血液培養の数を減らす方法を見つけるのはむずかしいかもしれません。
そこで,まず血液培養の使用量を半分にする必要がある場合を想定して,半分の量でどれだけの精度を保てるかを考えてみます。ご質問のように,1箇所から1セットの採血を行わないとすると,使用量は半分にできますが,コンタミネーションの評価がむずかしくなります。そこで,これまで1箇所から好気ボトルと嫌気ボトルの2本を採取していた本数を半分にし,2箇所から採取する方法であれば,コンタミネーションの問題を回避できます。
具体的には,好気ボトルと嫌気ボトルをそれぞれ1本ずつ別の箇所から採取することを基本として考えてみます。この場合は,問題となるのは検出感度です。これは根本的には解決できませんが,たとえば,必ず好気ボトルが必要な緑膿菌等の菌を標的とする場合のみ好気ボトルを2箇所から1本ずつということで,少し補うことはできるかもしれません。嫌気性菌を狙う場合も同様ですが,実際には嫌気ボトルのみでしか培養できない菌を標的にすることは少なく,好気ボトルを多く使用してしまうことが想定されます。それでも,緑膿菌も偏性嫌気性菌も疑わない状況で嫌気ボトルを2本用いることなどの対応で,感度を大きく落とさずに使用量を調節できるかもしれません。個人的には,これまでも,小児や何らかの理由で十分な採血量が得られなかった場合などで,好気ボトルのみに入れるなどの指示をすることはありました。
血液培養のもうひとつの意義である治療中の陰性確認では,より判断は簡単です。陰性確認では,量を半分にすれば感度の低下は避けられませんが,好気ボトルか嫌気ボトルかの必然性に関しては,起因菌がわかっているため確実に行えます。日本感染症学会は,陰性確認は1セットのみとすることなどを解決案として挙げていますが,2本のボトルを使用可能であるならば,陰性確認においても2箇所から検査すればコンタミネーションの判断がしやすくなるのではないかとも思います。
ここでは,半分にすることを想定して考えてみましたが,1/3にする場合など他の状況では,別の方法を考える必要があります。これは“資源が限られた環境”で医療を行うことを想定したものですが,それにより血液培養の本来の科学的な意義をより深く理解することができるのではないでしょうか。
【回答者】
安達英輔 東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科講師/感染制御部部長