高齢化に伴い成人脊柱変形を治療する機会も増えている。本疾患は成人期に生じるあらゆる脊柱変形の総称であり,その病態は非常に多岐にわたる。小児期の側弯症の遺残に変性が加わったものと,椎間板や筋肉の変性を契機に成人発症するものに大きく分類できるが,それ以外にも脊椎術後発症や,椎体骨折の変形治癒によるものなどがある。病態同様にその変形パターンも非常に多彩であり,冠状面での側弯変形と矢状面の後弯変形が脊柱の様々な高位に発生しうる。
脊柱変形のパターンと同様に非常に多彩な症状を呈する。腰痛,下肢痛,歩行障害など腰部脊柱管狭窄症に類似した症状から,胸椎カーブに伴う呼吸機能障害や胸腰椎後弯に伴う逆流性食道炎など,全身状態にまで影響を及ぼし様々な健康障害を引き起こすため,多角的視点で診断する必要がある。
画像評価は,立位全脊椎X線による脊柱骨盤アライメントの評価が主に用いられる。下肢痛や筋力低下などの神経症状が疑われる場合は,腰椎MRIを追加で行う。成人脊柱変形患者には骨粗鬆症を伴う症例が多いため,DEXAや血液検査で骨代謝マーカーを検査し,必要であれば薬物介入する。腰痛の原因として椎体骨折や感染,腫瘍,分離症などの病変がないかみておく必要がある。これらがなく脊柱骨盤アライメントに異常がある場合,姿勢不良による慢性的な腰痛の可能性がある。
成人脊柱変形患者に対しては保存療法が先行されることが多く,薬物療法,理学療法や装具療法が広く用いられているが,有効とするエビデンスはまだ不十分である。保存療法と比較して手術療法の有効性を調べたシステマティックレビューでは,手術療法は変形矯正と痛みの改善,機能改善に優れるが高い合併症率も報告されており,手術療法は慎重に進める必要がある。
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