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外リンパ瘻[私の治療]

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  • ▶治療の実際

    【保存的加療】

    急性の症状が生じてから1週間程度は安静を保ち自然治癒を待つ。この間頭部を30°挙上しての床上安静,鼻かみ・いきみ等の禁止(軟便薬が使われることもある),副腎皮質ステロイド投与等を行う。めまい症状が1週間以上改善しない場合や,高度の難聴を呈している,難聴が進行する場合には手術治療も選択される。病歴から外リンパ瘻が強く疑われる場合でも,慢性例でめまい・聴力変化がともにない場合は経過観察が選択される。

    【手術】

    内耳窓閉鎖術は,めまいに対する効果は高いという報告が多い2)。瘻孔は,前庭窓,蝸牛窓に生じることが多く,筋膜などの軟組織を留置後,組織接着剤を散布して固定する。手術後のベッド上安静は不要で,術翌日から歩行などは可能であるが,術後数カ月は重量物運搬,鼻かみなど頭蓋内圧・中耳圧が上昇する行為は避ける必要がある。しかしながら再発例の報告もある。再発を防ぐために,従来の方法よりも強固に内耳窓を塞ぐround window reinforcement(RWR)という術式が報告されており3),筆者らも軟骨を用いたRWRを施行している。

    術中に瘻孔が確認できない場合でも,閉鎖により症状が改善するとされており,術中の瘻孔・漏出の有無にかかわらず両内耳窓を閉鎖することが推奨される。

    【あぶみ骨陥入を認める症例の場合】

    手術により内耳障害を悪化させる可能性があるため,手術適応は慎重に判断する必要がある。症状が安定している場合には,手術せずに経過をみる方法もある。

    ▶専門家へのコンサルト

    難聴を伴う場合は,耳鼻咽喉科へのコンサルトが想定されるが,めまいのみの場合は判断に迷う。まずは,発症前に頭部外傷や圧外傷がなかったかを入念に問診する必要がある。ただし,誘因がない症例も多いため,原因不明のめまいでは外リンパ瘻を念頭に,耳鼻咽喉科専門医へのコンサルトが必要である。

    【文献】

    1)日本聴覚医学会, 編:外リンパ瘻. 急性感音難聴診療の手引き2018年版. 金原出版, 2018, p72-82.

    2)Matsuda H, et al:Front Neurol. 2023;14:1269298.

    3)Silverstein H, et al:Am J Otolaryngol. 2014;35(3):286-93.

    松田 帆(埼玉医科大学耳鼻咽喉科講師)
    池園哲郎(埼玉医科大学耳鼻咽喉科教授)

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