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在宅におけるリハビリテーション栄養[私の治療]

No.5251 (2024年12月14日発行) P.35

若林秀隆 (東京女子医科大学病院リハビリテーション科教授)

登録日: 2024-12-11

最終更新日: 2024-12-10

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  • リハビリテーション栄養とは,リハビリテーション(以下,リハ)と栄養の両面からアプローチすることで,患者の機能・活動・参加といった生活機能やQOLを最大限高めることである。2024年度の診療報酬改定では,リハ・栄養管理・口腔管理の連携と推進が医療保険および介護保険でも評価されたが,その背景にあるのはリハ栄養と医科歯科連携の推進である。
    在宅医療では,低栄養や過栄養・肥満といった栄養問題のために,生活機能やQOLが低下している人が少なくない。これらの場合,栄養状態を改善することで生活機能やQOLの改善を期待できる。

    ▶状態の把握・アセスメント

    リハ栄養ケアプロセスの第1段階,第2段階では,アセスメント・診断推論と診断を行う。国際生活機能分類(ICF)による全人的評価と,栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因の診断推論を行う。特に食欲低下,体重減少,サルコペニアの原因の診断推論が重要である1)。食欲低下,体重減少を認める場合,全患者において薬剤性および抑うつが原因ではないかを推論する。サルコペニアを認める場合,加齢,低活動,低栄養,疾患,医原性(主に急性期病院入院中の不適切な医療行為で生じるサルコペニア)のどれが主な原因かを推論する。

    ▶治療の実際

    リハ栄養ケアプロセスの第3段階ではゴール設定を行う2)。仮説思考でリハと栄養管理のSMART(specific:具体的,measurable:測定可能,achievable:達成可能,relevant:重要,time-bound:期間を明記)なゴールを設定する。たとえば「栄養改善」だとSMARTではないが,「1カ月後に1kgの体重増加(もしくは減少)」とすればSMARTである。つまり栄養管理のゴールを,期間を決めて体重を何kg増加・減少させるか,維持するかを決めるとよい。体重の長期ゴールは,患者の健常時体重や,患者自身がベストだと思う体重のことが多い。ただし,これらが患者の生活機能を最も高める体重でない場合には,医療者が仮説を立てベストだと思う体重を提示し患者と相談して決める。リハに関しては,たとえば「ADL改善」だとSMARTではないが,「3カ月後に自宅内を1人で自立して歩行できる」とすればSMARTである。

    リハ栄養ケアプロセスの第4段階では介入を行う。従来の栄養管理は,1日エネルギー必要量=1日エネルギー消費量であり,それまでの体重維持をめざしていた。しかし,体重のゴールが現状維持ではなく体重の増加もしくは減少の場合,攻めの栄養管理を行う。攻めの栄養管理とは「1日エネルギー必要量=1日エネルギー消費量±1日エネルギー蓄積量(1日200~750kcal程度)」とし,意図的に体重の増減をめざすものである。理論的には7500kcal,エネルギーバランスをプラスマイナスすることで1kgの体重増減が得られる。そのため1カ月で1kgの体重増減をめざす場合,250kcal×30日=7500kcalであるため,1日エネルギー蓄積量を±250kcalとする。ただし,エネルギー蓄積量は仮説であるため,実際に体重が増減したかどうか,リハ栄養ケアプロセスの第5段階でモニタリングが必要である。

    WEBコンテンツ「高齢者の体重減少〜リハビリテーション栄養ケアプロセスで考える」

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