GEヘルスケア・ジャパンは12月2日、「ポケットエコーで実現するこれからの在宅医療」をテーマにした調査結果を報告するメディアセミナーを開催した。同調査は、ポケットエコー「Vscan」シリーズを展開するGEヘルスケアがポケットエコーの使用実態と医療費へのコストインパクトについて、医療法人社団悠翔会と医療法人鳥伝白川会ドクターゴン診療所・ドクターゴン鎌倉診療所、紀美野町立国民健康保険国吉・長谷毛原診療所、奥尻町国民健康保険病院の4施設の在宅医がポケットエコーを利用して訪問診療・往診を行った225件を対象に実施した。
メディアセミナーでは、同社超音波本部の麻生光氏(Primary Care部部長)が訪問診療・往診時の循環器疾患診療において、ポケットエコーがないことで「在宅完結しなかった場合」は医療費が1人当たり約140万円、「緊急搬送した場合」は1人当たり4万6010円かかると指摘。ポケットエコーがなかった場合に78.2%が高次医療機関への受診が必要だったとの調査結果から「ポケットエコーの活用が医療コストの削減につながる」との考えを示し、超高齢社会における医療人材の不足や社会保障費増大という課題に対し、在宅医療へのシフトを進めることで医療コストの低減や患者のQOL向上が期待できると説明した。
同調査では、ポケットエコー検査が診療・治療上で「有用であった」と100%が回答。エコー検査で得られた結果については、「診断でき、治療できた」との回答が44.9%で最も多く、在宅でのエコー検査によって得られた結果は、「診断でき、治療できた」(44.9%)、「診断はできなかったが緊急疾患を除外できた」(32.9%)、「侵襲的なケアを回避できた」(12.4%)と続いた。検査部位についての質問(複数回答)では、腹部(40.9%)、肺(27.1%)、膀胱(24.4%)、心臓(23.6%)という回答だった。
同日は、ドクターゴン診療所院長の泰川恵吾氏と悠翔会理事長・診療部長の佐々木淳氏を交えたトークセッションが行われた。泰川氏は、ポケットエコー使用による緊急搬送を回避したケースとして、喘鳴を確認した心不全の既往がある高齢患者についてエコーで心不全を否定し、喘息治療で完結したケースや80歳代の認知症患者の急な発熱を膀胱炎と診断して抗菌剤投与で治療が終了した症例などを挙げた。
佐々木氏は、患者のQOL向上に役立ったケースとして、末期のすい臓がんで病院から入院を勧められた患者に対し、在宅でエコーガイド下のドレナージによる腹水処置を実施したことで最後まで自宅で家族とともに過ごすことができた症例を紹介した。こうした経験から医療依存度の高い疾患でも、「エコーなどの最新技術を用いることで在宅対応できる範囲が広がっており、患者にとっても在宅は選択肢になる」と強調。今後の課題としては、ポケットエコーのさらなる普及によりエコーを日常的に活用する在宅医の数を増やすことが重要との考えを示した。