爪白癬は白癬菌による爪部感染症である。日本人の約10%が罹患しており,年齢とともに罹患率が高まる。長期間罹患した足白癬に続発することが多く,爪遠位の混濁と爪下角質増殖がみられる遠位側縁爪甲下爪真菌症(distal and lateral subungual onychomycosis:DLSO),爪甲表面に感染し白斑状の混濁が生じる表在性白色爪真菌症(superficial white onychomycosis:SWO),糖尿病患者や免疫低下患者に多い爪基部から混濁が生じる近位爪甲下爪真菌症(proximal subungual onychomycosis:PSO),最重症型である爪甲全体が混濁し爪が肥厚あるいは破壊される全異栄養性爪真菌症(total dystrophic onychomycosis:TDO)などの病型に分類される。
爪白癬を疑う所見は,爪甲混濁,爪甲下角質増殖と爪肥厚である。これらの所見がみられたら真菌検査を行うとよい。検査は直接顕微鏡検査が基本である。SWOでは爪甲表面の混濁部を削り検体を採取,その他の病型ではできるだけ近位の爪甲下角質増殖部から検体を採取する。検体をスライドガラスにのせてKOH液を滴下し,カバーガラスを被せて顕微鏡で菌体を確認する。ただし検査を適切に行い,検査結果を判断するには熟練が必要である。培養検査は,特異度は高いが成功率が低く,結果が得られるまで2週間程度かかるため日常診療では用いにくい。
近年保険適用となった白癬菌抗原キットは感度特異度ともに高く,直接顕微鏡検査が行えない場合や,臨床的に爪白癬を強く疑いながら直接顕微鏡検査が陰性であった場合に用いることができ有用である。爪白癬外用抗真菌薬およびホスラブコナゾールは,これらの検査で爪白癬であると確定診断することが使用条件となっている。
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