人材採用では,求人を出して,応募を待つというやり方をとっているクリニックが多いのではないでしょうか。応募者のハードルを下げるのが,本連載第6回・第7回でご説明した,クリニック説明会です。説明会よりも,さらに準備・実施に時間と手間がかかるのがインターンシップですが,その効果は特筆すべきものです。私が主催するクリニックマネジメント協会でも,インターンシッププログラムの導入を特におすすめしています。
開業医にとって,インターンシッププログラムを経営の一部として組み込むことにより,クリニックの効率を向上させることが期待できます。多くの医療現場で人材不足が問題となっていますが,インターンシップを通じて将来の医療従事者を育成し,潜在的な採用者を見つけることができます。加えて,就職活動中の学生に実際に医療現場を体験してもらうことは,若い世代の医療業界への理解を深めることにもつながります。クリニックに新たな視点をもたらし,経営者視点での人的資源管理や運営効率化にも寄与するでしょう。
インターンシップは,応募者となる学生,特に医療業界をめざす人にとって,貴重な学習の場となります。まず,実際の医療現場で実践的なスキルを学ぶことができることがメリットとして挙げられます。患者とのコミュニケーションや基本的な業務の流れを学ぶことにより,学生は将来のキャリアに必要な基礎を築くことができます。また,実務を通して医療業界の課題や可能性を直接目にする機会を得ることで,自身のキャリア選択の視野が大きく広がります。これにより,学生は多様な選択肢の中から,自分に最適な進路を選択できるようになります。さらに,実際にクリニックを訪れ,スタッフと接触することにより,自分の志望する職場として適切かどうかを確認できます。
インターンシップは,クリニックにも様々なメリットをもたらします。まず,採用候補者になりうる人材を早期に発見し,適性を確認する絶好の機会となります。実際の業務を通じて学生の能力や適応力を見きわめることができるため,採用ミスを減らし,より適切な人材を選定できます。また,インターンシッププログラムを活用することで,クリニックのブランド価値や認知度の向上を図ることも可能です。プログラムに参加した学生がクリニックでの経験をポジティブに受け止めることで,口コミを通じて他の学生や医療関係者への広報効果が期待できます。さらに,若い感性や新たな視点を取り入れることで,クリニックの経営や医療サービスの質を向上させる革新的なアイデアを生み出すことも期待できます。