鼻出血は軽症のものから,重症(大量出血)のものまであり,また,単純な血管損傷による本態性鼻出血から,何らかの疾患が隠れているものまで存在する。そのため,出血部位の同定と出血の形態の診断が重要となる。
まず,出血が左右の鼻腔のどちらから出たのか,鼻腔前方からの出血か,後方からの出血かを判断する。鼻腔内に多数の点状血管拡張を認める場合は遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を,また,難治な鼻出血には血友病などの凝固異常を疑う必要がある。さらに,腫瘍が隠れていることもあり注意を要する。若年であれば若年性血管線維腫,中高年であれば悪性腫瘍を見逃してはならない。
まずは,左右のどちらから出血したかを確認し,前鼻腔から出血したのか,後方(口腔)へ垂れ込む出血なのかを確認する。前方からの場合は,鼻中隔前方に存在する血管の損傷であることが多い。小児であれば,鼻中隔前方(キーゼルバッハ部位)の静脈叢からの出血を疑う。成人であれば,主に高血圧が原因の動脈性の出血が多い。口腔に垂れ込む出血は後方からの出血であり,顎動脈の枝である蝶口蓋動脈領域からの出血を疑う。内視鏡を用いて蝶口蓋動脈本幹の位置,蝶形骨洞自然口下方,下鼻道後方などに出血点がないかを十分に観察する。
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