株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

「在宅専門」診療所の開設、解禁へ - 16年度導入に向け、診療報酬での差別化争点 [どうなる?診療報酬改定]

No.4773 (2015年10月17日発行) P.9

登録日: 2015-10-17

最終更新日: 2016-11-24

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

(概要) 在宅診療を専門に提供する医療機関が2016年度改定で導入される。ただし、在宅をかかりつけ医の外来医療の延長とする方針に変更はなく、診療報酬での差別化が図られそうだ。


政府が6月にまとめた「規制改革実施計画」で求めている、在宅診療を専門に提供する医療機関の開設が認められることとなった。中央社会保険医療協議会総会(田辺国昭会長)は7日、在宅専門の医療機関の導入を巡り議論。大幅に増加する高齢者への対応として、従来の在宅医療の提供体制を補完する視点から、診療側・支払側ともに導入する方向性について概ね了承した。2016年度診療報酬改定に向け、今後中医協で具体的な制度設計の議論が行われる。

●「外来応需体制」の確保が原則
現行の保険医療機関は、いわゆるフリーアクセスを確保するため、「外来応需の体制を有していること」が求められ、在宅専門では開設が認められていない。
一方、都市部を中心に高齢者の増加により在宅医療の需要が急増することに加え、「実質的」な在宅専門診療所もすでに存在する。また同日の中医協で、全体のわずか3%程度の「訪問診療件数51件以上」の診療所が、「訪問診療件数の約75%」「看取り件数の約45%」を実施しているとのデータ(表)が示されたように、在宅に積極的に取り組む一部の診療所が、訪問診療の大部分を担っている現状がある。
こうした現状を踏まえ、「毎回違う医師が往診に来るようになる」(中川俊男委員)ことへの懸念などからこれまで反対していた診療側も、地域包括ケアの一員として「外来応需体制をとることを原則」などとする条件付きで導入を認めた。

●看取り実施ゼロが25%以上
2016年度改定での導入に向けては、在宅専門の診療所をどう評価するかが課題となる。厚労省によれば、訪問診療を中心に行う診療所には、(1)居宅中心と高齢者住宅中心に二極化、(2)看取り実績ゼロが25%以上など看取り実施の二極化、(3)「鎮痛薬の持続皮下投与」「胸水・腹水の穿刺」などについて対応困難な医療機関が40%、(4)要介護3以上の患者割合40%以下の診療所が約20%─という特性がある。つまり、「高齢者施設などの集合住宅で要介護度の低い入所者を中心に訪問診療を手広く行う一方、看取りなどは実施しない」という診療所が一定数存在するということだ。
こうした状況を踏まえ、会合では鈴木邦彦委員(日医)が「(在宅専門では)かかりつけ医よりも効率的な診療所運営が行える点を診療報酬にも反映させるべき」とし、前改定で問題となった「同一建物」の割合が高い場合には「保険診療から排除すべき」と指摘。支払側もこれに賛同し、意見が一致した。
これを受け、厚労省は在宅専門で在宅療養支援診療所となる場合には、「同一建物居住者割合」「要介護度別の患者割合」「看取り件数」など、その機能の差に着目した指標を設定する方針だ。

【記者の眼】都市部などの現状を踏まえれば、容認は当然ともいえる判断だろう。しかし、大手資本による巨大在宅診療チェーンや経験の浅い若手医師のネットワークによる在宅療養支援診療所の登場なども想定され、質の担保を考慮した指標の設定が望まれるところだ。(T)

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top