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「18年度に控える診療報酬・介護報酬の同時改定との継続性を念頭に置いた」 [厚労省 宮嵜医療課長インタビュー]

No.4803 (2016年05月14日発行) P.8

登録日: 2016-05-14

最終更新日: 2016-12-01

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4月から運用が始まった2016年度診療報酬改定。医療機能の分化・連携の推進に向けた見直しが行われ、外来医療ではかかりつけ医機能の評価が充実された。16年度改定を担当した厚生労働省の宮嵜雅則保険局医療課長に改めてその狙いやポイントを聞いた。

■効率的な医療提供体制の構築をどう支えるか
─4月から運用が始まっているが、改めて2016年度診療報酬改定の狙いは?
前提として、団塊の世代がすべて後期高齢者の仲間入りをする2025年に向けて地域包括ケアシステムを構築していくという大きな流れがある。その流れに沿って、効率的な医療提供体制を作っていくということを、診療報酬でどう支えていけるかがポイントとなっている。18年度に控える次の診療報酬・介護報酬の同時改定と継続性を持たせることを念頭に置いた。
─外来で新設された「認知症地域包括診療料/加算」について伺いたい。
かかりつけ医の先生を評価していくというのは大事な視点だった。前回改定で導入した「地域包括診療料/加算」についても調査・検証をした結果、もう少し普及させるべきだろうと要件を緩和した。その上で、かかりつけ医という枠組みの中で、急増する認知症患者をしっかり診てくれる先生を評価しようと「認知症地域包括診療料/加算」を新設した。『新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)』の柱にあるように患者の状態に応じた適切な医療を提供するという視点から、対象疾患を「認知症+1疾患」として、その1疾患を限定せず、日頃は一般診療所で診てもらいたいというメッセージを込めた。 
─認知症の場合、専門の医療機関で診療を受けているケースが少なくないが、主治医を変える必要があるのか?
専門的な治療は別の医療機関でもいいが、認知症患者は高血圧など色々な疾患を抱えていることが多いので、投薬を含め一元的に管理してもらいたい。必要なときに、専門の先生に診てもらうことを妨げるものではない。むしろ初期の診断や増悪時などには専門の医療機関との連携を評価している。

■これまでしっかり診てくれていた先生を評価
─外来では小児に関するかかりつけ医機能の評価も新設された。
小児についても高齢者同様、1人の子どもを全人的に継続して診療することは大変重要ということで、「小児かかりつけ診療料」を新設した。すでに当たり前のようにやっていることだが、健診歴や予防接種歴の把握や、相談に乗った上で指導・助言している先生を評価していこうという考え。小児かかりつけ医のあるべき姿を示した部分もあるが、これまでしっかり診てくれていた先生を評価するといった側面もある。また、小児は休日・夜間診療が多いが、他の医療機関にかかることがダメなわけではなく、そういうケースを含めてかかりつけ医に把握してほしい。あとは程度問題で、いつも他にかかってばかりいたら、かかりつけ医とはいえないと思う。
─在宅医療では、前回改定の影響による調整が行われた印象だ。
これまでの改定の流れと同様に在宅医療の質を重視し、一方で量的な確保も重要ということで、2つの大きな視点から見直しを行った。質では、重症患者という視点を導入し、看取り実績をより重視した。量では、前回改定の影響もあるが、集合住宅に日を分けて訪問するといった非効率な診療が散見されたので、効率的に訪問している医療機関はそれなりに評価しつつ、月2回訪問しなくてもいい患者には1回の訪問でも管理料を算定できるようにした。こうした見直しによりできた時間で、他の居宅や集合住宅、施設をもっと訪問してほしいという狙いがある。それでも量的に不足する恐れがあるので、一定の要件を満たせば在宅医療を専門に行う診療所の開設を認めることとした。
─入院医療の見直しのポイントについて伺いたい。
今回改定の議論で最も意見調整に時間がかかったのは、7対1の「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合。重症患者を拾いやすいような項目に見直した上で、基準を何%にするかについて、支払側はできるだけ高くと20%台後半、診療側はそれでは厳しいと20%台前半を主張したが、最終的に25%とし、経過措置を設ける形で決着した。また、今回は要件として「平均在院日数の短縮」を盛り込まなかったが、次期改定においても議論の対象にはなると思う。今回は「退院支援加算」を新設するなど、社会保障審議会の基本方針にあるように、患者が追い出されるのではなく安心・納得して退院できるような仕組みづくりに重点を置いた。

■本体プラス0.49%で幅広い分野に配分できた
─今改定は医療機関から概ね評価されているが、改定率は厳しくなかったか?
立場によって色々な見方があると思うが、最終的には本体改定率が重要だ。今回は+0.49%、医療費ベース約2100億円の財源があり、これをどういう診療報酬項目で評価していくかという議論。前回改定の約5倍の財源をもらっているので、幅広い分野できめ細かく評価するという方向性で配分できた。
─次期改定への課題は?
附帯意見が18項目あり、どれも重要だが、丁寧にみていかなければいけないのが回復期リハビリテーション入院料に導入したアウトカム評価。保険診療にアウトカム評価を入れていくという視点は大事だと思うが、アウトカム評価は万能ではない。例えば成果が出やすい患者ばかりを集め、そうでない重症患者は排除されてしまうといったリスクがある。対象患者などの要件について慎重に設定しているが、検証調査をしっかり行い、医療現場で困ったことが起きていないかを見極めて、次期改定に向け議論を重ねる必要がある。

●用語解説
【地域包括診療料/加算】
届出数は2015年7月時点で同診療料が93施設、同加算が4713施設にとどまっており、14年7月と比べ減少傾向にある。16年度改定では病院は救急要件の削除、診療所では常勤医師要件を3人から2人に緩和する見直しが行われた。

●記者の眼
診療報酬改定は時の医療課長の個性が出る。今改定を巡る中医協の議論は、宮嵜課長が「しっかり資料を出して支払側・診療側の意見をいただく形で丁寧に進めていくことを心掛けた」と振り返るように、概ねスムーズに進んだ。大幅な見直しが目立った前回改定の調整が行われ、2025年に向け各医療機関が担うべき役割の大枠を示した改定と言えそうだ。(T)

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