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三浦梅園著『養生訓』の現代的意義 [エッセイ]

No.4794 (2016年03月12日発行) P.66

佐藤 裕 (国東市民病院)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 『養生訓』と聞いてまず想起するのは、筑前福岡藩の貝原益軒(1630~1714)が著した『養生訓』であろうし、西洋医学史に通じた者なら『サレルノ養生訓』であろう。ちなみに『サレルノ養生訓』とは、ヒトの「血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁」という4つの体液に気質や体質を関連づけて、それぞれに応じた治療法や食事を含めた養生法を説いたもので、今日においても「地中海式ダイエット(食事療法)」として広く流布している。

    閑話休題。不徳の致すところであるが、筆者は同郷でありながら、“豊後聖人”と言われる三浦梅園(1723~89)がいわゆる『養生訓』というものを書き遺していたことをつゆとも知らなかった。ところが数年前、主に東京在住の梅園学会1)の有志が梅園による『養生訓』の現代語訳に取り組み、2014年10月にようやく出版に漕ぎ着けたことを聞き、初めて梅園も儒医2)として『養生訓』を著していたことを知った次第である。

    早速入手して通読すると、内容的には益軒の『養生訓』と根底に流れる思想・精神は同じであるが、その執筆動機が異なっていた。すなわち、益軒の『養生訓』はその後書きにもあるように、自分が渉猟してきた養生法を説く多くの古典籍から得た知識に基づいて、自分がこれまで実践してきた“役立つ”養生法(益軒はこれを実践することにより、当時としては稀な“84歳”という長寿を全うした)を一般人にも広く知ってもらうべく出版したものである。

    一方の梅園の『養生訓』は、代々短命に終わっている杵築藩の豪商から相談を受けた際に、“いかにして一族の健康を維持・増進するか(すなわち、いかにして長寿を得るか、天寿を全うするか)”に関して、儒医としての立場から“養生”に関して助言(アドバイス)したものである(なお、梅園手書きの『養生訓』(写真)は国指定の重要文化財に指定されており、現在、梅園旧宅に隣接した梅園資料館に梅園の三大哲学書である『玄語』『贅語』『敢語』などとともに展示されている)。

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