【Q】
転移性肝腫瘍は切除適応となる原発疾患が限られており,大腸癌か神経内分泌腫瘍からのものが大部分です。乳癌からの肝転移に関しては,欧米の文献などでは切除症例が多く報告されており,成績も良好ですが,わが国においてはあまりまとまった報告がなく,乳腺外科から肝胆膵外科への紹介も少数例にとどまっているようです。これはわが国と欧米との切除適応の考え方の相違によるものなのでしょうか,それとも,わが国と欧米とで乳癌のbehaviorが異なるためでしょうか。昭和大学・明石定子先生のご教示をお願いします。【A】
乳癌の肝転移は,骨,肺といった他の臓器転移に比較して予後不良のため,肝切除は症例を限定して実施されてきました。良好な予後因子としては,DFI(disease free interval)1年以上,他臓器転移なし,転移個数1個,切除断端陰性,原発巣のER(estrogen receptor)陽性,手術前の化学療法奏効,若年,PS(physical status)良好,正常肝残存,全体の腫瘍量が少ない,などが挙げられ,これらの条件を満たした特定の患者に対して,肝切除は生存期間延長に寄与するかもしれないと報告されています。
1) Chua TC, et al:Eur J Cancer. 2011;47(15): 2282-90.