【Q】
骨髄移植や各種臓器移植の普及に伴い,呼吸器感染症に対する外科治療が増えてきています。特に,膿胸に対する外科治療は対処が難しい場合があります。膿胸腔の掻爬,洗浄,単房化を行う際にできるだけ肺損傷を起こさないように注意して行いますが,いったん損傷が起きると,硬い醸膿胸膜と正常胸膜とを縫着したときに肺が裂けることがあります。感染症の手術なので,プレジェットなどの異物を使いにくいと考えますが,工夫や手術のコツなどについて,その経験の多い結核予防会複十字病院・白石裕治先生のご教示をお願いします。【A】
膿胸はその病態によって米国胸部学会(A-merican Thoracic Society:ATS)の分類による病理学的3病期(滲出性期,線維素膿性期,器質化期)にわかれます。膿胸の初期治療は,適切な抗菌薬の使用による胸腔内感染の制御と胸腔ドレナージによる膿の排出です。3病期のうち最も初期の滲出性期であれば,胸腔ドレナージを行うことによって膿を排出し肺の再膨張を図ることが可能です。しかし,滲出性期の治療が不成功に終わったり,膿胸の治療開始が遅れたりすると,線維素膿性期に移行します。