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パーキンソン病薬物治療への腸内細菌の影響と検査・診断【小腸での細菌の過剰増殖で薬剤の吸収障害が生じ,オフ現象が出現しやすくなる可能性が考えられる】

No.4794 (2016年03月12日発行) P.52

渡辺宏久 (名古屋大学脳とこころの研究センター 特任教授)

祖父江 元 (名古屋大学医学系研究科特任教授)

登録日: 2016-03-12

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

パーキンソン病で薬の効きが悪い患者には,腸内細菌が関係していると聞きました。簡単な検査や症状から診断することはできるでしょうか。また患者への指導や治療はどのようにしたらよいでしょうか。名古屋大学・渡辺宏久先生のご回答をお願いします。
【質問者】
服部優子:本町クリニック・服部神経内科副院長

【A】

一般に,小腸は細菌が増殖しづらい環境になっています。しかし,近年,パーキンソン病において小腸における細菌の過剰増殖を認めることが報告されています。その頻度は報告によって差があり,25~67%とされています。日本人における検討はまだありません。疾患に伴う腸管の動きの悪化,ドパミン製剤やプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)の内服などが誘因と考えられています。
小腸で細菌が過剰増殖すると,下痢,腹痛,腹部膨満感,体重減少,早期満腹感,嘔気,便秘,排便障害,脂溶性ビタミン吸収障害,ビタミンB12や鉄の吸収障害などが起こりえます。欧米からの報告では,細菌の過剰増殖のある患者ではウェアリングオフをはじめとしたオフ症状の出現頻度が高くなり,細菌の過剰増殖を治療することでオフ時間の改善を認めうることが確認されています。レボドパは中型の大きさのアミノ酸で,その吸収場所は主に小腸ですから,小腸における細菌の増殖がある場合には薬剤の吸収障害が生じ,オフ現象が出現しやすくなる可能性が考えられています。
(1)小腸における細菌の過剰増殖の診断
最も確実な方法は,腸液を実際に採取して細菌培養を行う検査です。しかし,腸液を採取する負担や,contaminationを考慮する必要があります。細菌培養に伴う陽性基準についても明確な定義はありません。呼気試験も用いられますが,疾患に伴う腸管の動きの悪化が結果に影響する可能性もあります。また,実際に抗菌薬を内服して症状の改善をみる方法も行われます。これら3つの方法は,いずれも確実な方法ではなく,より正確な診断が必要な場合には複数の検査が行われることもあります。
(2)小腸における細菌の過剰増殖に対する治療
抗菌薬治療で数カ月にわたり改善しうるとされています。海外の文献では腸管の細菌のみをターゲットとするリファキシミンが使われています。日本では,この抗菌薬は肝性脳症用のオーファンドラッグとなっており,一般的に使用する薬剤の位置づけではありません。ビブラマイシンR,オーグメンチンR,シプロキサンR,バクシダールRなどの有用性が報告されています。ただ,9カ月で44%の再発率があります。むやみに抗菌薬を内服することは腸内細菌における無用な菌交代を引き起こすため,十分な注意が必要です。抗菌薬以外では,腸管蠕動促進薬投与,基礎疾患治療と栄養改善,細菌の栄養になりやすい単糖類やラクトースは少なくして脂肪や中鎖脂肪酸トリグリセリドで補う,などの方法もあります。PPIやH2 阻害薬は避けることが望ましいとされています。

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