【Q】
先日,医師就業斡旋や開業コンサルタントを行っている会社から,「弊社のDM発送に使いたいので,出身大学(医学部)の卒業生名簿を10日間お借りできませんか。情報は一切漏らさず,ほかのことには使いません」と,案内が来た。即座に断ったが,もし情報提供して流用された場合,何らかの罪に問われる可能性はあるか。【A】
刑法第134条1項は,「医師,薬剤師,医薬品販売業者,助産師,弁護士,弁護人,公証人又はこれらの職にあった者が,正当な理由がないのに,その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは,6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」と定めている。医師が診察したことにより知りえた患者の病気についての情報を,本人の同意をとらずに製薬会社や生命保険会社に知らせれば,当該医師は,この条文が定める秘密漏示罪で処罰される。しかし,出身大学(医学部)の卒業生名簿は,医師が業務上知りえた人の秘密には当たらないので,それを開業コンサルタント会社に提供しても,刑法第134条の規定により処罰されることはない。
1) 宇賀克也:個人情報保護法の逐条解説. 第4版. 有斐閣, 2013.
2) 宇賀克也:個人情報保護の理論と実務. 有斐閣, 2009.