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てんかん発作や周期性不機嫌症と 概日・季節性リズムの関係

No.4743 (2015年03月21日発行) P.63

神山 潤 (東京ベイ・浦安市川医療センターCEO)

登録日: 2015-03-21

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

てんかんに伴う周期性不機嫌症あるいは発作を,概日リズムや季節性リズムから論じた先行研究はあるか。もしあれば,これらの関係を。 (東京都 T)

【A】

周期性不機嫌症とは,てんかんの1病型として周期的に強い不機嫌になること,あるいは難治性てんかん患者で発作と関連して攻撃性・暴力性が高まることを指す。
最近でも,とある殺人事件の裁判で「被告は前頭葉てんかんに罹患しており,犯行時は周期性不機嫌症の状態」との記録もあるようである。しかし,現在のてんかん発作型国際分類(文献1)にこの用語はない。また,2006年に日本てんかん学会が発行した「てんかん学用語事典」にもこの用語は掲載されていない。
不機嫌=aggressionではないが,攻撃性(aggression)について,てんかん発作の前後,間欠期との関係も含めて解説している総説(文献2)では,特にてんかん患者で頻度が高いということはなく,睡眠覚醒リズムやコルチゾールの日内分泌リズムが乱されると攻撃性が生じやすく,てんかん発作がこれらのリズムの混乱をきたしうると指摘している。
次に,てんかん発作と概日リズムについては,19世紀以来検討されてきた。Gowers(文献3)は,大発作をきたす患者の5分の1は夜間にのみ発作を生じ,睡眠中に生じる発作の時間帯には2つのピーク〔就床後2時間(21~23時)と,明け方の3~5時の間〕があると記している。
近年の時計遺伝子の知見も含め,分子機構からてんかん発作の概日リズムを論じた総説(文献4)では,発作発現のピークについて,成人の複雑部分発作と側頭葉起始の発作は11~17時,頭頂葉起始の発作は17~23時,前頭葉起始の発作は成人では23~5時,小児では17~23時,小児の全身性痙攣は睡眠中だが,小児の間代性痙攣,欠神発作,脱力発作,ミオクロニー発作は覚醒中に生じるものの時間帯は特定できない,と文献を引用して紹介している。
てんかん発作と季節性リズムについては冬に多く夏に少ないとする報告(文献5)があり,ビタミンDの関与や光そのものの治療効果(文献6)が想定されている。なお,てんかん患者における突然死は冬に多いとする報告(文献7)がある一方,否定的な報告(文献8)もある。

【文献】


1) Berg AT, et al:Epilepsia. 2010;51(4):676-85.
2) Bronsard D, et al:J Physiol Paris. 2013;107(4): 327-34.
3) Gowers WR:Epilepsy and Other Convulsive Diseases. Williams Wood & Company, 1885.
4) Cho CH:Front Cell Neurosci. 2012;6:55.
5) Clemens Z, et al:J Neurol Transl Neurosci. 2013;
1:1016.
6) Baxendale SA:Med Hypotheses. 2011;76(5): 661-4.
7) Scorza FA, et al:Epilepsy Behav. 2009;14(4):707.
8) Bell GS, et al:Epilepsia. 2010;51(5):773-6.

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