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REM睡眠行動障害と夜間せん妄の鑑別

No.4764 (2015年08月15日発行) P.64

伊藤 洋 (東京慈恵会医科大学葛飾医療センター病院長)

登録日: 2015-08-15

最終更新日: 2016-12-13

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【Q】

REM睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder:RBD)では,夜間に突然大声を出したり,暴れたりすることが知られています。近年,レビー小体型認知症やパーキンソン病での睡眠障害が注目されていますが,夜間せん妄との鑑別をご教示下さい。 (愛知県 N)

【A】

RBDも夜間せん妄も,夜間睡眠時に叫ぶ,暴れるなどの行動異常が出現する病態ですが,その病態生理はまったく異なっています。したがって,治療方法も大きく異なることから,鑑別診断が重要になります。
表1 (文献1)に『睡眠障害国際分類第2版』(ICSD-2)におけるRBDの診断基準を示しました。表からも明らかなように,RBDにおける夜間の異常行動は,REM睡眠期に通常は消失する筋電図活動が何らかの理由により消失せず,このため夢内容がそのまま行動化してしまうことによると考えられます。つまり,RBDにおける異常行動は夢内容と一致していることが原則であり,したがって,外界からの視覚などの影響は受けることはなく,せん妄の場合とは異なり,壁のシミやベッドパートナーを泥棒と錯覚して飛びかかることなどはないと言えます。
一方,夜間せん妄は急性の脳機能障害であり,様々なレベルの意識障害に幻視を主とする幻覚,錯覚,精神運動興奮などの症状が出現する病態です。認知症などの脳器質性疾患,種々の身体疾患,薬物などが原因となります。
特に認知症(レビー小体型)においてはRBD,夜間せん妄のいずれもが出現しうるので鑑別が重要になります。せん妄では意識レベルは低下しているものの,ある程度の知覚入力(視覚,聴覚など)は保たれることから,たとえばRBDでは認められない,ベッドパートナーを泥棒と錯覚して飛びかかるとか,押し入れをトイレと誤るといった行動が出現することになるのです。
治療法も異なり,RBDではクロナゼパムが80~90%の症例で奏効することが知られていますが,せん妄に対しては原疾患に対する治療が主となり,興奮が著しい場合には少量の抗精神病薬を使用するのが一般的です。

【文献】


1) 米国睡眠医学会:睡眠障害国際分類. 第2版. 医学書院, 2010, p156.

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