【Q】
肺炎球菌ワクチンとHibワクチンの定期予防接種は生後2カ月から5歳までに行うと決まっているため,接種開始年齢が上がると接種回数も減ります(たとえば,Hibワクチンなら生後2カ月で開始すれば4回,生後7カ月で開始すれば3回,1歳で開始なら1回)。
どのような理由から,5歳以上を定期接種の対象としないのでしょうか。年齢が上がると抗体産生が良くなるからでしょうか。副反応が増えるからでしょうか。 (千葉県 K)
【A】
小児用肺炎球菌ワクチン,Hibワクチンともに,乳児期早期(生後2~6カ月)に初回接種を開始する接種スケジュールでは,初回接種として3回,1歳以降の追加接種として1回の計4回の接種を行うように推奨されています。
小児用肺炎球菌ワクチンでは,乳児期早期に初回接種として1回のみの接種を行った場合,未接種と比較すると,ある程度の抗体価の上昇が認められるものの,初回接種として2回あるいは3回接種した場合と比較すると,抗体価の上昇や維持の面で効果は不十分であることが報告されています(文献1)。一方,1歳以上2歳未満で初回接種を行う場合は2回接種(1回目と2回目の間隔を60日以上あける)で,2歳以上で初回接種を行う場合は1回のみの接種で,それぞれおおむね良好な抗体価の上昇が得られることが報告されています(文献2)。小児用肺炎球菌ワクチンは,B細胞性免疫の未熟な2歳未満の乳幼児でも肺炎球菌莢膜ポリサッカライドに対する免疫が付与されるように,精製された肺炎球菌莢膜ポリサッカライドとキャリア蛋白〔無毒性変異ジフテリア毒素(CRM197)〕を結合させたワクチンです。2歳以上では,2歳未満と比較して肺炎球菌莢膜ポリサッカライドに対する免疫応答が良好であるため,より少ない接種回数で効果が期待できます。
Hibワクチンも,小児用肺炎球菌ワクチンと同様に,乳幼児の免疫反応を賦活化するため,莢膜多糖体に含まれるポリリボシルリビトールリン酸(polyribosylribitol phosphate:PRP)にキャリア蛋白(破傷風トキソイド)を結合させたワクチンです。1歳以上では,1回接種でも良好な抗体価の上昇が得られています(文献3)。
肺炎球菌による侵襲性感染症は,ワクチンが導入される前の時代には,5歳未満,特に生後6~11カ月に多く,2~4歳では罹患率が下がり,5歳以上ではさらに症例が少なくなります(文献4) 。Hibによる侵襲性感染症も同様で,2歳未満,特に生後6~11カ月に多く,年齢が上がるごとに罹患率が低下します(文献5)。
なお,小児用肺炎球菌ワクチン,Hibワクチンともに年齢が上昇すると重篤な副反応の出現頻度が増えるということはありません(文献4,5)。
1) Russell FM, et al:Vaccine. 2009;27(41):5685-91.
2) Wysocki J, et al:Vaccine. 2015;33(14):1719-25.
3) Holmes SJ, et al:J Pediatr. 1991;118(3):364-71.
4) Klugman KP, et al:Vaccines. 6th ed. Plotkin SA, et al, ed. Elsevier Saunders, 2013, p504-41.
5) Chandran KP, et al:Vaccines. 6th ed. Plotkin SA, et al, ed. Elsevier Saunders, 2013, p167-81.